どうして「男性育休者」の周囲ばかり“不満だらけ”なのか(1/2 ページ)

» 2024年01月23日 08時00分 公開
[鈴木麻耶ITmedia]

Q: 男性育休への注目が高まる中、当社でも育休取得を推進しています。

 声かけや広報を強化した成果もあり、少しずつ育休取得者が増えているのですが、最近「育休を取られると仕事が増えて困る」「育休社員の分も働いているんだから給料を上げてほしい」など、引継ぎ社員からフォローを求める不満の声が多く聞こえています。正直「そこまでできないよ……」という感じなのですが、育休取得者が出た場合、会社としてどこまで対応すべきなのでしょうか?

助走のない「男性育休」

A: 社員が育休を希望するのであれば、原則として会社は取らせなくてはなりません。

 大前提として、育児休業制度を設けることは、会社の義務として法律で定められています。また、従業員からの希望があれば会社は原則取らせなければいけません。

 そして、請求できる従業員は、男女を問いません。ここは従来から変わっていません。世の中的にも男性育休促進の潮流の中、「どうやったらできるのか」の仕組みを作らないと古い体質の企業として取り残されてしまうでしょう。

 政府は2024年1月以降、育児休業者や育児短時間勤務者の業務代替する体制整備に対する助成金を新設しました。今のところ、体制整備に対し企業にお金を出すことで育児休業取得率そのものが向上するのかは未知数です。

 事実、企業での男性の育児休業取得率は17%程度(22年度)で、「育休は権利ですから」と堂々と育児休業に邁進できる風土なのかはまた別の話といえるでしょう。

(写真はイメージ、ゲッティイメージズより)

 ところで、女性の育児休業は、妊娠時期からつわり、体調不良からの産休という「助走」があります。また、産休から育児休業に入ることが慣例化されているため、休業前から代替要員を確保したり、業務棚卸したりと「いなくても仕事が回る」仕組み化がされていきます。

 しかし、男性の育児休業は助走なくいきなり入る感じが否めません。そのためか、育児休業とはいっても実質休業が不可能なスケジュールが組まれていたり、妻の出産後数日という休暇的な育児休業など「いないと仕事が回らない」事例はよくあります。

 これは実際に育児休業を言い出せなかった外食産業勤務の男性の事例です。

 社内イントラには常に男性の育児休業に向けて意欲的な掲示されていました。妻も安定期に入り、夫婦で相談の上自身の育児休業取得の意思を上司に相談しようとした矢先、ショッピングモールへの出店が決まります。出店までは綿密なスケジュールが組まれる上、開店直前期ともなれば突発の打ち合わせ、連日の深夜の荷物搬入など今までの経験から容易に想像できます。

 周囲を見回すと、国道沿いの店舗改修を任されている同僚、別店舗のクロージングで店舗スタッフとの面談がバチバチに入っている上司という状況。相談できる隙間も雰囲気もありません。

 結局「この人手不足の状況で業務を振れる人もいない、職場に迷惑はかけられない」と育児休業取得を言い出せず、妻からの冷めた視線の中漫然と仕事をこなす状況でした。

 このように、どれだけ育児介護休業法の改正が入っても、男性に取りやすいように会社が周知をしても、結局は「現場の状況どうであるか」が結論を持っているのです。

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