マーケティング・シンカ論

バーガーキングの「10万円どうぞ」企画が面白い、2つの理由 生みの親に話を聞いた火曜日に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2024年02月13日 09時27分 公開
[土肥義則ITmedia]

人事担当者は「ピーン」ときたはず

 2つめは、コストである。日本政策金融公庫の新規開業実態調査(2023年度)によると、飲食店の開業費用の平均値は1027万円で、中央値は550万円という結果に。物件を取得する際に必要な資金は、一般的に開業費用の20%ほどと言われている。となると、そこそこのお金を用意しなければいけない。

 バーガーキングの場合、出店にどのくらいの費用をかけているのか。具体的な数字は非公開だが、「店舗の面積が狭いこともあって、平均よりは低い」(野村社長)そうだ。それでも、物件を取得するにあたって、数百万円はかかる。

出店費用はかなりかかる

 この話をすると、人事の仕事をしている人は「ピーン」ときたかもしれない。「社員紹介制度」である。会社が従業員に対して、「ウチの会社で働きたいという人はいませんか? 紹介してくれたら寿司か焼肉をごちそうしますよ。採用が決まれば、10万円を差し上げますので」といった内容の制度である。

 景気回復や人口減少などの影響を受け、多くの会社で採用難が続いている。自社の採用ページに情報を公開しても、たくさんの人が応募してくれるとは限らない。とはいえ、人材紹介会社に依頼すれば、1人当たり数百万円はかかる。

 採用コストを抑えるために、従業員に「誰か紹介してよ。もちろん、謝礼は支払うから」といった企業が増えているようだ。この話を野村社長にしたところ、「企画を考えるにあたって、『社員紹介制度』を参考にしましたね」と語っていた。

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 話がちょっとそれてしまうが、情報がたくさん集まった理由として、「物件ご紹介フォーム」の記載項目も影響しているのではないかと思っている。気になったのは、応募にあたって投稿者の本名を記載しなくてもいいことだ(ペンネームでOK)。サイトに情報を提供するのは、手間がかかる。だが、たくさんの人に書き込んでほしい。

 こうしたジレンマを抱える中で、入力フォームを作成するにあたって、次のような議論を重ねた。本名は必要なのか、住所はいるのかな→いらないよね→必要になればお聞きするのはどうかな→それでいいよね、と。こうした流れで、簡素化した入力フォームが完成。プライベートの情報を記載しなくてもいい気軽さが、応募数の多さにつながったのかもしれない。

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