マーケティング・シンカ論

バーガーキングの「10万円どうぞ」企画が面白い、2つの理由 生みの親に話を聞いた火曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2024年02月13日 09時27分 公開
[土肥義則ITmedia]

リスクの少ないエリアをあぶり出す

 そもそも、なぜこのような企画を始めたのか。先ほど紹介したように、バーガーキングは19年5月に不採算店を閉鎖していった。「あっちの店も、こっちの店も」といった具合にどんどん店を畳んでいては、未来の姿が描けなくなる。会社は「店をどんどん増やしていくぞー」と号令をかけ、28年末までに600店舗の目標を掲げたのだ。

 ショッピングモールや駅前などに店を増やしていって、2月5日時点で、店舗数は215店に。店舗の担当者は、あっちにいい物件があれば足を運び、こっちにいい情報があれば話を聞いて。こうして急ピッチで店を増やしてきたものの、「このままのペースだと目標を達成することは難しい。アイデアを考えて、店を増やせないか」ということで、キャンペーン実施に踏み切ったのだ。ちなみに、企画を考えたのは野村社長である。

店舗数の推移
バーガーキングの店内

 この施策を思いついたのは、23年7月のこと。年内での出店を考えると、8月末までに情報を集めなければいけない。というわけで、当初キャンペーンは8月中に実施することを考えていたが、他の業務に追われていたこともあってのびのびに。ただ、後回しにしても、時は過ぎていく。時は過ぎても、目標の数字は変わらない。温めていた企画を実現するために、12月中旬ごろから準備を整えて、1月に入ってからSNSに投稿といった流れである。

 キャンペーンの内容を受けて、ネット上で「この企画を考えた人は天才」といったコメントがあったが、個人的に「うまいなあ」と感じたポイントが2つある。

 1つめは、マーケティング調査ができること。寄せられた情報を確認すると、多くの人が「富山県〇〇市に出店して」「高知県〇〇町にぜひ」などと書いていたら、それをどう読み解けばいいのか。そのエリアに潜在的なファンがたくさんいる、といった仮説を立てられるのだ。

 これまで「ココに出店しても、お客はそれほど来ないだろうなあ」と思い込んでいたところでも、気付きを与えてくれるかもしれない。「え、期待している人がたくさんいるの? であれば出店を前向きに考えてみよう」と。

 バーガーキングはフランチャイズ(FC)の店が多く、オーナーは出店するかどうかを決めるにあたって情報をきちんと読み込む。商圏にどのくらいの人が住んでいるのか、店の前をどのくらいの人が歩いているのか、など。こうしたデータに目を通すわけだが、潜在的なファンがどのくらいいるのかといった数を知ることは難しい。しかも、このキャンペーンの場合、情報が増えれば増えるほど、リスクの少ないエリアをあぶり出せるのだ。

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