パワハラ加害者はなぜ「自覚」がないのか 負の連鎖はこう止めろ(1/2 ページ)

» 2024年02月16日 08時00分 公開
[武田 正行ITmedia]

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 2023年は、ビッグモーターや宝塚歌劇団のパワハラに関するニュースが大きく取り上げられました。年々パワハラの規制が強くなり、事件が公になりやすくなる一方で、取り締まりが厳しくなってもなお、パワハラが根絶されていない現状があります。

(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 ここで、パワハラに関する社会の変化を振り返ってみましょう。

 2000年代になり「パワハラ」という言葉が生まれ、世の中に浸透することとなりました。厚生労働省も10年代には「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を発足し、パワハラへの取り組みを開始しました。

 その後、国連でもハラスメントに対する取り組みが行われるようになりました。日本でも19年に労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」によって規制の対象となり、22年には中小企業にもパワハラの防止対策が義務化され、規制の範囲も拡大しました。

 このように年々、パワハラに対する意識も高まり、規制も厳しいものとなっています。それにも変わらず、パワハラがなくならないのはなぜなのでしょうか。

パワハラ加害者はなぜ「自覚」がないのか

 「パワハラに対する軽視」「被害者が声をあげづらい環境」「我慢強いことが美徳とされる日本の風土」などいろいろな原因が考えられますが、その中でも「行為者のパワハラに対する自覚のなさ」が一番の原因であるといえるでしょう。

 厚生労働省の「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、ハラスメントが発生しやすい職場の特徴として「上司と部下のコミュニケーションが少ない」「残業が多い/休みが取り難い職場」「失敗が許されない/失敗への許容度が低い職場」などが上位となっています。

 コミュニケーションが少ない職場では、上司と部下がお互いに何を考えているのか理解することが難しい状態となってしまいます。すると、上司は部下に自分の考えを押し付ける形で仕事の指示を出してしまい、部下がその考えの通りの仕事をしないと不満を抱きます。その結果、厳しい態度で接し、結果的にパワハラをしてしまうことが想像できます。

 残業が多く休みの取り難い職場や、失敗が許されない職場では自分の気持ちに余裕が持てなくなってしまうため、その不満を他人にぶつけてしまう……。このような背景からパワハラが発生してしまうと考えられます。

 これらの特徴がある職場では、自分の思い通りにならないことに対する不満、残業の多さや休みの少なさに対する不満、失敗をしてはいけないという使命感やプレッシャーからパワハラが発生しています。加害者は自分がパワハラをしているという意識がなく、無自覚のままにパワハラをしてしまっていることも少なくないでしょう。

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