新時代セールスの教科書

24時間働ける「AIセールスマン」に勝てる? 今人間が磨くべきスキルとは生成AIは味方? 未来の営業(3/4 ページ)

» 2024年02月28日 08時00分 公開

人間にしか発揮できない価値とは?

 人間の営業活動を「全てAIが代替する」わけではないのはなぜでしょうか? それは、優秀・万能に見えるAIでも、得意不得意を分解すると、明らかに自動化できる・できない領域があるからです。

人間とAIの得意領域(Magic Moment社作成)

 AIは膨大なデータを分析し、その分析結果から最適解をサジェストしたり、多くの変数を踏まえた上で示唆を導き出すことには長けている一方で、社会性・共感性には弱い性質があります。そのため、定型化された通常の営業プロセスでは対処できない例外対応や、顧客との対話・交渉など高度な問題解決、人間関係の構築、顧客の微妙なニーズの特定など、「人間が介在した方が価値を発揮する部分」は残るというのが筆者の見解です。AIにより自動化される領域が拡張されても、人間の売り手だからこそ買い手に提供できる独自の価値は残り続けると考えています。

 以前の記事で、多くの購入者が「営業担当が購買プロセスに関与しないこと」を好む傾向について言及しましたが、これは必ずしも顧客にとって購買体験の質が高く満足感のあるものになることが約束されているわけではありません。例えば製品理解が難しいB2B商材など、顧客自身が自力で製品やサービスの購入検討・導入を進めることが難しい商材を提供している場合は、営業担当が存在する意義が大きいです。また、購買層が変わるタイミングの対応の変化など、機知を働かせ介在価値を作る営業担当は、よりリッチな顧客体験を提供することができると期待されます。

 Gartnerの調査では「購入が自分にとって正しい選択肢である」と感じられる場合には、買い手が決済規模を拡大する可能性が30%上がることが分かっています。また、購買プロセスに人間が関わることで買い手が納得感を感じる可能性が2.3倍高くなると明らかになりました。

 商談のスピードを上げる、提案規模の拡大といった成果は、今日の営業の世界でも優秀な営業担当にひも付く特徴ではないでしょうか。企業が営業活動にAIを使用することが当たり前になる時代が到来し、生身の人間の存在が希少になればなるほど、営業担当に想像力や共感性が求められるようになり、AIが競合になるよりも人材の実力差が極端に表れると考えられます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.