新時代セールスの教科書

24時間働ける「AIセールスマン」に勝てる? 今人間が磨くべきスキルとは生成AIは味方? 未来の営業(1/4 ページ)

» 2024年02月28日 08時00分 公開

【注目】ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 冬 開催!

新規受注額を1年で4.5倍にした「スクラムセールス」

【開催期間】2024年1月30日(火)〜2月25日(日)

【視聴】無料

【視聴方法】こちらより事前登録

スクラムセールスとは、全員が全顧客・全プロセスに対応できる体制をつくり、各商談先や顧客の担当を明記せず、全員で全顧客のあらゆる課題の解決に向き合うという営業スタイルだ。スクラムセールスにより新規受注額を1年で4.5倍にした株式会社cocoの事例を紹介する。

生成AIは味方? 未来の営業:

 生成AIが急速に広がり、「AIに仕事を取られるのでは?」という風潮が後を絶たない。営業領域において生成AIの存在は、味方になりうるのか、はたまた脅威になりうるのか――。

 本連載では、AIに関する技術要素の進化から2040年までの営業領域におけるテクノロジー活用のメガトレンドを読み解きまとめた資料をベースに、これまでの営業活動がどのように変わるのかを考察する。

<参考:Magic Moment:Future of Sales


 大規模言語モデル(LLM)や生成AIの技術進化により、ChatGPTに状況さえ説明すれば、パーソナライズしたメールを書いてくれる時代になりました。Gartnerの調査(※1)では、2025年までに大企業において作成する文書の30%が生成AIによるものになると予測されています。

 また、あらゆる領域でAIの活用方法が模索される中、「人間と対話できるAIアバター」が提供される可能性も話題になるなど、これらの技術が将来どこまで人間に代わって自律的に行動するのか、という点に注目が集まっています。

※1:Beyond ChatGPT:the future of generative AI for enterprises(Gartner、2023/1/26)

 LLMや生成AIは営業パーソンにとって味方になるのでしょうか? もしくは、仕事を奪う“競合”となるのでしょうか?

 今回は、LLMや生成AIをどのように使うことで人間の介在価値をさらに高めることができるのか、未来の営業論をグーグルジャパンで営業統括部長、freeeで営業統括役員を歴任し、現在はMagic Momentの代表を務める村尾祐弥が解説します。

眠らない「最強の競合」 AIは人間の営業を代替する?

 生成AIが台頭したことで、AIの活用範囲はデータ分析などの論理的思考分野のみならず、より人に近いクリエイティブな分野にまで広がっています。営業の領域においても、これまで人が担っていた業務や役割自体を変える可能性を秘めており、24時間休まずに稼働できる「AIセールスマン」が、リソースの制約がある生身の営業担当にとって「最強の競合」になる可能性が生まれています。

 AIが業務を代替し、果ては人間の競合となることがどれだけ現実的かについて、今日の営業現場で実際に活用されている、また今後実用化が見込まれる技術要素を深掘り、考察していきます。

2024年、既に実現しているAI活用

定型的な営業業務の自動化

 AIの技術要素である「機械学習」は、データからパターンやルールを自動的に学習し、学習結果を法則化することができます。

 営業の分野でも、定型化された業務は自動実行できるようになっています。例えば、セミナー実施後の御礼メール送信やChatbotを活用した問い合わせ対応があります。また、顧客アプローチを開始後、経過時間など一定の条件・ルールにのっとった上で内容を調整し、返信が来るまでメールを自動送信する、新規の顧客リストに架電するといった業務にも活用の幅は広がっています。

(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 自動音声を活用した受電はイメージがつきやすいかと思いますが、「架電」への機械学習の活用も実現しています。例えば用件を伝えた上で「〜〜のような困りごとがあるか」などの定型的な質問と電話のボタン操作を組み合わせて顧客との意思疎通を行い、応答に応じて営業担当へ電話をつないだり、アポイント日程調整まで行ったりと、簡単な状況確認・トスアップであれば効率化・自動化できるレベルに達しています。

 また直近では、生成AIを使用することで会話のコンテクストに基づき電子メールを自動生成する機能も、海外のセールステック企業から提供され始めています。

優先的に当たるべきホットリードの発見、レコメンド

 さまざまなビジネスシーンで実用化が進むAIの技術要素の一つに「レコメンデーション」があります。レコメンデーションとは、対象者にとって価値があると思われる商品や情報をカスタマイズして提示する機能です。現在もECサイトや広告などではWeb上のCookieやキャッシュ、一次情報から個人の趣味趣向に合ったモノやサービスを提案してくれるようになっているので、イメージはつくかと思います。

 営業の分野では、顧客のオンライン上の活動履歴や営業担当が電話でのヒアリングで確認した情報など、営業に関わる活動データを組織に蓄積。そのデータをAIが分析し「この案件を優先的に取り組んだ方が良い」「この案件は〇〇に任せた方が良い」「次のアクションはxxが良い」など、当たるべき顧客の優先順位付けやネクストアクションのレコメンデーションを行う機能が、既にサービスとして提供されています。LLMや生成AIの技術がさらに進化すれば、AIからのサジェストを人間が受け取り判断する傾向が、さらに加速することが予測されます。

音声認識による通話記録や文字起こし・通話分析

 AIの技術要素の一つである「音声認識」は、音声をテキストやコマンドに変換する技術です。身近なコンシューマー向けの活用例としては、Amazonの「Alexa(アレクサ)」をはじめとするスマートスピーカーや、Appleの「Siri(シリ)」、Androidの「Googleアシスト」などの音声アシスタントが有名です。

 営業の分野でも、顧客と営業担当の通話記録、会話内容の文字起こしなどを搭載するテクノロジーが出てきているほか、会話の内容を分析し、営業担当がより質の高い顧客コミュニケーションができるようにサポートする機能が提供されています。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.