マーケティング・シンカ論

マーケティング学習の「必読書44選」 300社超の大企業を支援したマーケターが推薦トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(2/4 ページ)

» 2024年03月06日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]
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ステップ3(象限D):全体感と構造を学ぶ

 ここから本格的な学習に入ります。ステップ2までで、リアリティと「ざっくりした全体感」を学びました。本ステップの目的は、マーケティングの「全体像の解像度」を上げることです。

 売り上げをつくるためのマーケティングにはどんな変数があり、どのような因果構造になっているのかを「概観」できていると、ネクストステップからの学習効率が格段に上がります。ぜひ心して取り組んでください。推薦図書は2冊です。

・推薦図書7:池田紀行『売上の地図』(日経BP)

 売り上げは何かひとつの施策が効いて上下動するのではなく、複数の変数が構造的に影響し合ってつくられていることを解説した一冊。商品やサービスそのもの、売り場(配荷)、想起、好意、クチコミ、ソーシャルメディア、オウンドメディア、広告、PRなどがどのような構造を成して売り上げに至るのか。ここで(単純な因果関係ではなく)深い「因果構造」を理解しておきましょう。

・推薦図書8:池田紀行、トライバルメディアハウス『業界別マーケティングの地図』(日経BP)

 洗濯用洗剤と自動車は、買うまでの検討プロセスや度合いが違うように、マーケティング戦略は商品カテゴリー(≒消費者のカテゴリー関与度)によって大きく変わります。売り上げの因果構造は、業界によって「どこ」が「どのように」違うのか、お菓子・アイス、家電など14業界の考察を通じて学べます(※2024年3月15日出版予定)

ステップ4(象限E):全体感と流れを学ぶ

 本ステップの目的は、ステップ3で学んだ「全体感」の中に「線」を見いだすことです。「マーケティングの全体感」(面)の中に「マーケティングの流れ」(線)が見えると、ステップ5以降の点の学習効率が確実に上がります。個別手法や個別概念の解像度は粗くて構いません。「流れ」を掴むことを強く意識して取り組んでください。推薦図書は2冊です。

・推薦図書9:池田紀行『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)

 マーケティングの現場で頻発するミス(こんなはずじゃなかった!)の発生原因の解明と解決策を提示しています。マーケティングにおける8つの原理原則を示し、単価の低い最寄品と、単価が高く購入までに検討を要する傾向にある専門品におけるトライアル購入とリピート購入に至る主要な4つのルート(線)を解説した一冊。マーケティングの〈点⇔線⇔面〉をつなげる助けになるはずです。

・推薦図書10:森岡毅、今西聖貴『確率思考の戦略論』(KADOKAWA/角川書店)

 USJのV字回復や、25年夏に沖縄にグランドオープン予定のジャングリアなどでも用いられている需要(集客)予測モデル(NBDモデル)が解説されています。数学の方程式は難解なので飛ばして良いですが、マーケティング実務において重要な戦略とプレファレンス(好意度)について、実戦の流れを深く学べる一冊です。

ステップ4.5:思考を磨く

 ここで少しだけ番外編を。マーケティング学習の9象限マトリクスには含まれていませんが、ここで思考を磨くプロセスを経ておくと、ネクストステップ以降の学習効率が上がります。ぜひ、ステップ5に入る前に以下の本で思考レベルを上げてください。推薦図書は4冊です。

・推薦図書11:細谷功『「具体⇔抽象」トレーニング』(PHP研究所)

 事例は分かりやすいですが、いくら事例を学んでもマーケティングの実務力は上がりません。理由は、事例は「具体」で再現性が低いからです。再現性を高めるためには、個別の具体から本質やパターンを抽出して「抽象化」する必要があります。

 「ヒント」ではなく「答え」を、「理論」ではなく「事例」を求める風潮が強いですが、「学習のための学習」ではなく、「実務力を高めることをゴールとした学習」をするならば、抽象化スキルは必須です。ぜひこのタイミングで「具体⇔抽象」を学び、「事例くれくれ族」から卒業してください。

・推薦図書12:細谷功『メタ思考トレーニング』(PHP研究所)

 上記『「具体⇔抽象」トレーニング』の姉妹本です。メタ思考とは「物事を一つ上の視点から考える」こと。具体→抽象→具体の「筋の良い縦移動」をするためには、「自身で質の良い “なぜなぜ”」を繰り返す必要があり、そのためにはメタ思考力が必須となります。2冊同時に手に取り、本書に沿ったトレーニングで「思考回路」を変えてしまいましょう。

・推薦図書13:中川 邦夫『問題解決の全体観 上巻 ハード思考編』(コンテンツ・ファクトリー)

 このタイミングでなくても構いませんが、いつか必ず手にとってほしいのが本書です。マーケティングの目的は「お客さまに買っていただくこと」ですから、やるべきことは「お客さまが買わない理由を明らかにして、課題を解決すること」、つまり問題解決です。本書は、問題解決における課題と解決法を超高度に抽象化し、汎用的な「型」と万能な「道具」を提供してくれます。

・推薦図書14:中川邦夫『問題解決の全体観 下巻 ソフト思考編』

 上巻の「型」と「道具」に続き、「思考様式」と「試合運び」を教えてくれます。仕事もマーケティングも「問題解決」の連続です。ここで「問題解決の全体観」をインストールし、一気に戦闘力を上げましょう。

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