マーケティング・シンカ論

マーケティング学習の「必読書44選」 300社超の大企業を支援したマーケターが推薦トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(4/4 ページ)

» 2024年03月06日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]
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ステップ6(象限I):個別理論を学ぶ

 本ステップの目的は、ステップ5(象限F)で学んだことに理論的裏付けを加え、知識の強度を高め、再現性を高めることです。再現性高く成果を出し続けるマーケターは必ず理論を学んでいます。ステップ5で止まらず、必ずステップ6に進んでください。ここを頑張れるかどうかが、長期的なパフォーマンスを決めることを忘れないでください。推薦図書は10冊です。

・推薦図書33:和田充夫、恩藏直人、三浦俊彦『マーケティング戦略〔第6版〕』(有斐閣)

 少々難解に感じるかもしれませんが、(多くの人が読み切れる)マーケティングの理論書として本書以上に正確かつ高い網羅性でまとまっている本を私は知りません。全マーケター必読の書です。

・推薦図書34:青木幸弘、新倉貴士、佐々木壮太郎、松下光司『消費者行動論』(有斐閣)

 消費者行動理論だけで一冊の理論書になっている恐ろしく奥深い本。

 マーケティングにおける消費者行動、消費行動と消費パターン、消費者行動の変化とその諸相、情報処理のメカニズム、情報処理の動機づけ、情報処理の能力、購買意思決定の分析、購買前の情報処理、購買時の情報処理、購買後の情報処理、購買意思決定プロセスとマーケティングなど、全マーケターが知りたがっていることが理論として凝縮され、整理されています。

・推薦図書35:服部雅史、小島治幸、北神慎司『基礎から学ぶ認知心理学』(有斐閣)

 消費者行動論における情報処理のベースとなる「認知のメカニズム」について学びを深める本。人の記憶や感覚、思考といった認識の仕組みを科学的に理論化しているため、「広告やPRによってプレファレンスを高め、想起集合から第一想起入りを果たす」などといった現場で発生する仕事に厚みのある論理的裏付けや誤りを見抜く視点を与えてくれます。

・推薦図書36:原田英生、向山雅夫、渡辺達朗『ベーシック流通と商業〔第3版〕』(有斐閣アルマ)

 マーケティングの4Pにおけるチャネル戦略に該当するテーマですが、本書はそれだけにとどまらず、流通や店舗に関わる理論・仕組み・社会的役割を「変わりゆく生き物」のように捉え解説しています。マーケティングからの視点だけでなく、流通が人間の社会的な営みにおいて「いかになくてはならない存在か」を理解できる一冊。知識の深みが増すため、一読をおすすめします。

・推薦図書37:岸志津江、田中洋、嶋村和恵『現代広告論 第3版』(有斐閣)

 実践的な広告をアカデミックの視点から理論化した骨太な広告論。「何も広告を理論で学ばなくても……」という声もありましょうが、だからこそ(本書一冊だけでいいから)広告理論を学んでおきましょう、と言いたい。広告の運用実務もKKDD(経験と勘と度胸とデータ)だけでは立ち行かなくなりますよ。

・推薦図書38:田中洋『ブランド戦略論』(有斐閣)

 複数の実践本を読み、いよいよしっかりとブランド理論全体を体系的に学ぼうという段になったら手に取ってほしい一冊。フォントの小ささ、文字数の多さ、本の分厚さに怯むかもしれませんが、最初から最後まで精読せずとも、困ったときに手に取る広辞苑のような地引的存在としても頼れる一冊です。一家に一冊の書。

・推薦図書39:ジョアン・マグレッタ『〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房)

 きょうび、競合のいない市場などありません。全てのマーケティングはすなわち競争戦略でもあります。M.E. ポーター『競争の戦略』や『[新版]競争戦略論』は少々ハードルが高いですが、本書は要点を簡潔にまとめてくれています。

・推薦図書40:楠木建『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)

 言わずと知れた30万部突破の大ベストセラー。「戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」というコピー通り、真に秀逸な競争戦略には表からは見えない「そういうことだったのか!」が隠されています。M.E. ポーターの競争戦略を学んだ上で本書を手に取るともう一段視座を上げることができます。

・推薦図書41:黒岩健一郎、浦野寛子『サービス・マーケティング』(有斐閣)

 日本で1920年には3割未満だった第三次産業就業者は、2015年に7割を超えました。つまり、日本の主要産業はサービス業ということです。にもかかわらず、世のマーケティング本はメーカー(製造業)のマーケティング理論が大半を占めています。サービスにはサービス特有の特性があります。本書でサービス・マーケティングの原理原則をおさえておきましょう。

・推薦図書42:芹澤連『戦略ごっこ』(日経BP)

 ここまで紹介した理論書は全て「従来のセオリー」を学ぶものです。一方で本書は「あなたたちが “当たり前” と信じているそれらの理論は、もしかしたら間違っているかもしれませんよ」とエビデンスを基に警鐘を鳴らします。従来のセオリーと、それらを覆すエビデンスを論拠した主張。どちらも学んだ上で、強度と厚みのある自身の考えを整理する刺激を与えてくれる一冊です。

ステップ7(象限G):ケーススタディで学ぶ

 本ステップの目的は、ステップ6で学んだ理論を、ケーススタディを通して解像度を上げることです。以下の1冊をおすすめします。

・推薦図書43:グロービス経営大学院『[改訂4版]グロービスMBAマーケティング』

 理論とケース(事例)を接続させるために最適な一冊。理論は抽象度が高く、事例は具体が強い。それぞれを個別に学んでも理論と事例をつなげるのに苦労するマーケターが多いですが、本書は理論学習からケーススタディへシームレスにつなげてくれます。

 本ではありませんが、豊富な事例を日々大量に提供してくれる日経クロストレンドへのアクセスは生活習慣に組み込むべき。良質な記事は有料会員限定なので、この際、会員になってしまいましょう。必ず元は取れます。

ステップ8(象限H):全体理論を学ぶ

 本ステップの目的は、理論学習の仕上げです。推薦図書は1冊です。

・推薦図書44:フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー、アレクサンダー・チェルネフ『コトラー&ケラー&チェルネフ マーケティング・マネジメント〔原書16版〕』(丸善出版)

 800ページにおよぶ本書は、分厚さ、重量、価格全てにおいて本というより辞書の様相を呈しています。しかし、ステップ8に到達するころ、あなたはすでに本書に記されている多くのことをすでに知り、理解しているはずです。いずれ、答え合わせと間違い探しの感覚で本書に向き合う日に向け、精進を重ねましょう。


 本記事をざっと読み、「こんなに読めないよ!」と思った方も少なくないはず。ということで次回は、学習効率を加速させるインプット学習術の二つ目」として、多くの人が知りたがる「最強の読書術」ご紹介します。

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著者紹介:株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長 池田 紀行

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1973年生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手企業300社以上のマーケティング支援実績を持つ。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上で、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)のほか、『売上の地図』(日経BP)、『自分を育てる働き方ノート』(WAVE出版)など著書・共著書多数。X(旧Twitter):@ikedanoriyuki

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