マーケティング・シンカ論

おすすめのビジネス書、人に聞くのはなぜ無意味? 複利を生む「読書術」を学ぶトライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(3/3 ページ)

» 2024年03月13日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]
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「読むのが早いからたくさん読める」は因果が逆

 「読むのが早い人はいいよな。でも私は読むのが遅いからそんなにたくさんは読めない!」という人がいます。しかし、これは因果が逆です。

 本を読むのが早い人は、ほぼ例外なく大量の本を読んでいます。大量の本を読んだ結果として、読むのが早くなったのです。

 同一テーマで複数の本を大量に併読していくと、「あ、これはあっちの本にも書いてあったな」「ここは共通概念の確認だから飛ばして良さそうだな」と土地勘が付いてきます。

 土地勘があるから、「飛ばして良い箇所」と「本書特有の主張(メインディッシュ)」を見分けられる。だから、読むのが早いのです(つまり、読むのが早い人は適宜飛ばし読みをしています)。初学者は土地勘が無いため、「飛ばして良い箇所」と「熟読したほうがいい箇所」の分別がつかず、全部読まなければなりません。だから遅いのです。

 仕事の質が量からしか生まれないことと同じです。量をこなすから重要な箇所と、さほど重要ではない箇所を仕分けることができる。だから結果として緩急がつけられる。近道はないと確信しています。

読書量の目安は年間100冊

 読書が重要なことも、速読するためにはたくさんの本を読まなければならないことも分かった。ではどのくらいの量を読めばいいのか気になりますよね。

 目安は、手取り給与の10分の1です。本当は5分の1と言いたいところですが、少々マッチョすぎるので10分の1にしておきます。月給の手取りが20万円なら2万円です。2200円の本なら、2万円で約9冊(年間約109冊)買えます。

 文化庁の「国語に関する世論調査」(2018年)によると、日本人の平均年間読書量は12.3冊でした。月に1冊も本を読まない人は47%、1〜2冊が34%、3〜4冊が18%、5〜6冊が10%、7冊以上読むと答えたのは4%程度という結果に。しかも、この読書の大半は小説や趣味に関する本です。

日本人の平均年間読書量は少ない(画像:文化庁「国語に関する世論調査」より)

 ビジネス書を月に10冊読めばトップ3%に入れます。あなたが努力をするように、クライアントも、上司も先輩も同僚も部下も後輩もすべからく努力しています。その中で「相対的に」知識を増やすには、「相対的に」読書量で上回るしかありません。それが、手取り給与の10分の1を書籍購入費に回すという目安です。

 月10冊の読書は投資と同じです。複利で効いてきます。継続することで、1年後の戦闘力は大きく変わります。圧倒的な量の本を読み、頭の中に整理棚ができる。仕事の中で、その引き出しを開け生かしていく。それはやがてあなただけの経験と知恵になります。

 インプットは重要ですが、アウトプットとセットでないと実務では生きてきません。ということで、次回は学習効率を加速させるアウトプット術について解説します。

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著者紹介:株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長 池田 紀行

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1973年生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手企業300社以上のマーケティング支援実績を持つ。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上で、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)のほか、『売上の地図』(日経BP)、『自分を育てる働き方ノート』(WAVE出版)など著書・共著書多数。X(旧Twitter):@ikedanoriyuki

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