マーケティングはビジネスを成功に導く武器です。しかし、その領域は広範で専門性が高いことに加え、テクノロジーの進化や消費者ニーズの変化を常に反映させる必要があるため、簡単に扱えるようにはなりません。にもかかわらず、基本の学び方を理解せずに迷子になるマーケターが後を絶ちません。本連載では「マーケティングの学び方を学ぶ方法」を解説します。マーケティングの学習法を身に付けて初めて、マーケターのスタートラインに立つことができます。トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」開校です。
前回は、学習効率を加速させるインプット術の第1弾として、マーケティング学習の9象限マトリクス(学習ステップ)に沿った推薦図書44冊を紹介しました。
ここで皆さんが知りたいのは、「本じゃなきゃダメ?(他の方法でもいい?)」「アンダーラインとか引いた方がいいの?」「付箋とか貼った方がいいの?」「読んだ後は要点を何かにまとめた方がいいの?」などの「効率的な読書法」でしょう。
そこで、学習効率を加速させるインプット術の第2弾として今回は、私の独断と偏見による最強の読書術を解説します。
多くの人は学習において「できる限り少ないインプット量で、できる限り多くの知識を増やしたい」「可能な限りラクをして有益な情報をインプットしたい」と考えます。だから「効率」にこだわる。しかし「無料でラクに学べる」方法は存在しません。
確かに、ちまたには無料で学べるさまざまな方法があります。SNS、YouTube動画を観る、Webメディアの記事を読む、ウェビナーに参加するなどです。しかし、それらを「つまみ食い」していても体系立った知識の吸収にはつながりません。マーケティングの知識は体系が命で、目に入った好みのものだけをつまみ食いしてもさほど効力を発揮しないのです。
さらに、読者や視聴者に「ウケの良い」コンテンツは、情報を極限まで削ぎ落とし、かつ「具体的」で「分かりやすく」した「具体」の権化です。点としての具体をいくつ知っていても、実務ではほとんど使えません。結果、「いろいろ勉強しているのに実践力が上がらない」と嘆くことになります。
また、「知っている」と「分かっている」を同一視するのも危険です。それらは全く別物です。マーケティング学習は「知る」ことが目的ではなく「実戦で生かせる」がゴールです。「できる」ためには「分かっている」必要があり、「分かる」ようになるために「知る」のです。「知る」は「分かる」「できる」に向かうための手段でしかありません(決して「知る」を目的化してはなりません)。
「分かる」ためには、知った上でちゃんと自分の頭で考え、反芻(はんすう)することが大事です。そうすると、新しい知識が過去の知識や経験とつながり、「ということはつまりこういうことなのかな……?」と、自分なりに解釈できるようになる。そしてようやく「なるほど、そういうことか!!」と「分かる」に達する。
オーディオブックなども便利ですが、インプットした新しい知識を反芻し、思考を巡らせ、解釈する工程を経ることが難しいです。また、そうした工程に入ろうとしないしない場合がほとんどでしょう。結果、「知っている」(聞いたことがある)段階から脱することができず、実務で使える知識にはならない(努力している割には報われない)可能性が高いと思います。ラクに学べる方法などないのです。
25年以上にわたってマーケティングの学習と実務をしてきた私のファイナルアンサーは、「最強のインプット法は読書一択」です。本には、SNSやWebメディアの記事などにはない以下の素晴らしさがあります。
「でも、2000円は高いなあ……」と思いますか?
本を執筆してみると分かりますが、10万字の文章を、理路整然と、順序だって、分かりやすくまとめるためには、膨大な知識、経験、労力を必要とします。しかも、そこにプロの編集者が並走している。実務や研究で大忙しの先人たちの「生きた知恵」を、たったの2000円程度で手に入れられる。こんなに安く買える高品質な情報パッケージはこの世に存在しないというのが私の意見です。
「評判が良いから買ってみたけど、期待外れだった」という声がありますが、ビジネス書は、たったの一行でも役に立つ情報が得られれば十分に元が取れます。その「たったの一行」や「たったひとつの考える枠組み」が、あなたの仕事のアウトプットをほんの少しだけ良いものにし、その積み重ねが人生全体のキャリアを変えるのです。
「効率重視」は時に「素晴らしい本との出合い」を遠ざけます。その痛手は大きい。この世で最も貴重な資源は時間であってお金ではありません。最も賢く、効率的に「実務で使える知識」を学びたいのなら、選択肢は書籍一択なのです。
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