マーケティング・シンカ論

知識詰め込み型のマーケターは仕事ができない 「考える力」を鍛えるアウトプット方法トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(2/3 ページ)

» 2024年03月21日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]

自分の頭で「考える」 どんなトレーニングを積むべきか

 では、考えるためにはどうしたらいいのでしょうか。

 結論を言いましょう。文章を書くのです。

 私たち人間は深く思考することができる唯一の生き物です。動物も目の前の獲物をどう狩るか、という具体の思考は可能です。しかし、将来の自分や神の存在といった抽象的な概念については考えられません。

 抽象度の高い思考力は、人間のみが有しているものと言えます。そして、それらの思考は言語で行われています。私たちは何かを考えるとき、必ず「言葉で考えている」のです。

 だから「考えがまとまらない」というときは、「言葉で表現できない状態」であると同義なのです。よく「私、文章が苦手なんです」という人がいます。しかし、厳しい言い方をすれば、それは「論理的に考え、言語表現できるレベルまで思考を深められていない」ということであり、思考していない(できていない)ことを「文章が苦手」と言い訳しているに過ぎません。

 「いろんなことが重なって、頭がぐちゃぐちゃでどうしたらいいのか分からない!」という状態になったとしましょう。そんなとき、頭の中は「言葉で整理されていないたくさんのモヤモヤ」に支配されています。しかし「なぜ今、頭がぐちゃぐちゃなんだろう」「ぐちゃぐちゃの中身を箇条書きで書き出してみよう」と文章化(箇条書き)してみたらどうでしょうか。だいたい5〜6個、多くても10個程度しか書き出せないはずです。

 つまり、書き出してみればなんてことはないことなのに、言語化できていないだけでモヤモヤとモヤモヤが(本来は関係ないのに)くっついたり、ありもしないのにもっとたくさんの問題があるように錯覚したりしているだけなのです。

1万字の文章は、パワポ100枚の企画書よりも難しい

 「文章なんて書かなくたって(書けなくたって)、自分はパワーポイントで100枚の提案書を作ることができる」という人もいるでしょう。しかし、パワポ100枚なんて仕事に慣れれば誰だって作れます。大事なのは「説得力のある論理の筋」です。その観点が欠けている提案書は「このページは何のためにあるのか」「前後がつながってない」「何が言いたいのかよく分からない」ものになってしまいます。

 どんなテーマでも構いません。試しに3000字の文章を書いてみてください。Xの制限は140文字ですから、約20投稿分です。Xを20連発で投稿すると考えれば、なんとか書けそうですよね。しかし(書いてみると分かりますが)これが絶望的に書けません。なぜでしょうか? それは、あなたの頭の中で、書こうとしていることについて考えがまとまっていないからです。正確に言えば、言語化できるレベルで思考できていないのです。

 人は、思考が足りていないことでも(特にEQが高い人は)なんとなく言葉をつなぎ合わせて話すことができてしまします。しかし、議事録を書いている人からは「たくさんしゃべっているけど、何も言ってない」「何を言っているのか、意味が分からない」「(議事録に)なんて書いたらいいか分からない」と思われている可能性が高いです。

 逆に、3000字の文章を書いた後に、それを誰かに話してみてください。話が上手でなくても、分かりやすさは格段に上がるはずです。その理由は「話す前に、書くことを通して考えたから」です。書くために、何周も思考を巡らせたからです。

 話が分かりやすい人は、話すテクニックがすごいのではなく、話す前に考え尽くしているから分かりやすいのです。決してプレゼンテクニックうんぬんの話ではないのです。

 ここまでで、アウトプットの目的である「インプットした知識を、実戦で使えるレベルに引き上げる」ためには、書くことが重要だとお伝えしました。ここからは「何を、どう書くか」について解説します。

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