マーケティング・シンカ論

知識詰め込み型のマーケターは仕事ができない 「考える力」を鍛えるアウトプット方法トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(3/3 ページ)

» 2024年03月21日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]
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noteを書こう

 ということで、まずはnoteを書いてください。上達には適度な緊張感が不可欠ですから、公開することを推奨します。文章を書く(ことを通して思考する)習慣を作りましょう。

 「考える習慣」では駄目です。「(一定の文字数の)文章を書く習慣」です。一部の天才なら別ですが、私たち凡人は、考えたことを書くことで「考えること(深く思考すること)ができていない」ことを自覚できます。逆に言えば、書かなければ「考えた気になれてしまう」のです。

 ポイントは「考えるために書く」ことです。「書くために書く」のではありません。そのため、あまりストレスなくスラスラ書ける文章は、思考がともなっていない雑文です。それは誰かが話したことや本に書いてあることをほぼそのまま書き写しているだけに過ぎません。文章の「型」を習得する方法としては悪くありませんが、思考力を磨くためのアウトプットにはなりません。

 書くのは、インプットしたことに対する学びポイントだけでなく、何が学びになったのか、なぜ(今までにない)気付きを得たのか、自分の意見はどうか、批判的な意見はないか、他の知識や経験とつなげて発展できることはないかなど、考えないと書けないことを書くのです。

 注意点は、ここでも手段の目的化をしないことです。連続○日更新などが目的化してしまい、日々の雑記や、散在している情報のまとめ記事や、注目されている事例をピックアップするなど、更新を目的化しないでください。目的はあくまで自身の思考を深めるために書くことです。決して作業を習慣にしないでください。

Xに投稿しよう

 思考しながら書くとなると、noteの更新は週に1〜2本になるでしょう。しかしそれではアウトプットの量が足りません。日々のアウトプットはXの投稿で補いましょう。

 「毎日そんなに投稿することなんてないよ!」という方には、読んだ記事の要約を投稿する方法がおすすめです。日経クロストレンドやMarkeZine、アドタイなどで読んだ記事の要約を3〜5個の箇条書きで書き、記事URLとともに投稿するのです。

 Xを見ている人の多くは、忙しくて記事の原文を読むことができない(もしくはそこまでの関心がない)人がほとんどです。そんなフォロワーに、記事の要約を届けるのです。記事を要約するためには(重要な要点をピックアップし、短く簡潔な箇条書きとして整理するためには)、記事を要約することを目的としながら記事を熟読し、考え、重要箇所を取捨選択しながら優先順位を付け、短い文章で完結に表現するスキルを磨かなければなりません。

 自身の思考&文章化トレーニングになるばかりか(品質が向上すれば)フォロワーも増える。一挙両得の方法です。

 この方法を続けていると、いずれ必ず「自分の意見」が出てきます。そのときが、要約→自分の意見への脱皮が始まったサインです。こうなったら儲(もう)けもの。数千字のnoteも、以前よりストレス少なく書き上げられるようになっているはずです。

社内講師をやろう

 インプットしたことを考え、日々Xで要約や意見を投稿し、週に1〜2回はコンスタントにnoteが書けるようになったら、次は「口頭で人に説明する訓練」を取り入れましょう。

 一度思考を巡らせ、言語化作業が終わっている内容ですから、いくばくかは流暢に話せるはずです。しかし、それでも話しながら「あれ? 上手く話せないな」「これってどういうことだっけ?」と、ここでも自分の不甲斐なさを実感することになります。

 これは、目の前に誰かがいると緊張してしまうこともありますが、ほとんどは「脳内のシナプスがまだあちこちで断線している」ことの現れです。書いていたときはつながっているつもりでも、よどみなく説明しようとすると線が切れていることに気付き、しどろもどろになってしまう。

 しかしこれは、話すことにチャレンジした人だけが得られる「最高の断線発見器」なんです。話すことで断線に気付ければ、またそこに戻って思考を巡らせることができます。そして、次回はもっとうまく話せるようになる。これの繰り返しなのです。

 社内で話す機会がないのなら副業でも良いですし、友人や知人の会社でのボランティア講師でも良いでしょう。とにかく、人前で話す(学んだテーマについて説明する)機会を増やしてください。「一番成長するのは、教えられる人ではなく、教える人である」は本当です。教える側が、一番学びを得るのです。

成長は振り返りの回数で決まる

 いろいろと話してきましたが、とどのつまり、インプット効率が良いかどうかは、アウトプットしてみなければ分からないということです。アウトプットする前から「このインプット法は効率が良くないな」などと、なぜ言えるのでしょう。それは、アウトプットを前提としない、心地よいインプット沼から出るつもりのない人の狭い見識です。

 インプット効率の良さは逆からしか分かりません。つまり、アウトプット効率の良いインプット(手段や取り組み方)こそが、真の「インプット効率」なのです。それを探し当てるのです(まあそれが読書なんですけれど)。

 人は、何回も何回も同じことを繰り返すことで上達するのではありません。振り返り、改善する。インプットもアウトプットも漫然と続けない。目的に近付いているかどうか、常にウォッチし、やり方を振り返り、修正を加える。インプットもアウトプットも、振り返りが全てです。1カ月に一回程度は必ず立ち止まり、現在のやり方のまま努力を重ねて良いのか、改善すべきことはないか、もっと良いやり方はないか、思考を巡らせてください。

 次回は、学習効率を加速させるアウトプット術の2つ目として、学んだことから「法則やパターン」を見いだす(抽象化する)方法について解説します。

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著者紹介:株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長 池田 紀行

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1973年生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手企業300社以上のマーケティング支援実績を持つ。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上で、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)のほか、『売上の地図』(日経BP)、『自分を育てる働き方ノート』(WAVE出版)など著書・共著書多数。X(旧Twitter):@ikedanoriyuki

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