マーケティング・シンカ論

成長するマーケターは一度「知識に翻弄される」 突破口は実践の中にしかないトライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(1/2 ページ)

» 2024年04月03日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]

連載:トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」

マーケティングはビジネスを成功に導く武器です。しかし、その領域は広範で専門性が高いことに加え、テクノロジーの進化や消費者ニーズの変化を常に反映させる必要があるため、簡単に扱えるようにはなりません。にもかかわらず、基本の学び方を理解せずに迷子になるマーケターが後を絶ちません。本連載では「マーケティングの学び方を学ぶ方法」を解説します。マーケティングの学習法を身に付けて初めて、マーケターのスタートラインに立つことができます。トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」開校です。

 前回は、学習効率を加速させるアウトプット術の2つ目として、学んだことから本質を抽出し、パターンや法則を見いだす(抽象化する)方法について解説しました。

 インプット法とアウトプット法を学び、トレーニングしたら、いよいよ実戦(実務)です。そこで今回は、学習効果を加速させる実戦術として、実戦する前の心構え、実戦する上での作法と心得、具体的な取り組み法について解説します。

 ここまで学んできたインプット法もアウトプット法も、全ては実戦力を上げるための手段でしかありません。マイペースで行えたコンフォートゾーンから抜け出し、いざ出陣です。

実践力を上げるための心構えや作法、具体的な取り組みを解説します(画像:ゲッティイメージズより)

現場はあなたが成長するための場ではない

 はじめに一番重要なことを確認しておきます。マーケティングの現場(実務)は、あなたが成長するために存在する場ではありません。仕事なのですから、プロのマーケターとして最大のパフォーマンスを発揮し、自社ないしクライアントから期待されている役割を果たすことが「目的中の目的」です。

 給料をもらって仕事をしている以上、間違えても「自分が成長するための仕事(機会)」などと考えてはいけません。仕事を通じて得られる経験や成長は、プロとしての役割を果たした上で結果として得られる副次的なものと捉えてください。ここを勘違いしている人が少なくありません。仕事とは成果を出すことが最優先の場。それを決して忘れないでください。

 これを大前提とした上で、学んだことを実戦する方法をお伝えします。

「知識に翻弄されるトンネル」を抜けるには実戦あるのみ!

 まず、実戦する上での心構えを紹介します。

 悲しい事実なのですが、たくさん本を読み、noteやXでアウトプットしたことを実戦に移したとき、多くの場合ほとんど使い物になりません。使い物にならないばかりか、むしろ後退していると感じることすらあるかもしれません。

 その理由は、頭の中に溢(あふ)れかえっている借り物の知識を引き出しから出し、次々に机の上に並べ、無理やり当てはめようとしているからです。概念やフレームは器のようなものです。さまざまな機能を果たす器を机の上に並べ、持っている情報(例:市場概況、商品特性、顧客特性、競合特性など)を無理やり手持ちの器に入れ、整理しようと試みる作業は順番が逆なのです。

 本来、器は必要なときに必要なシーンで最適に活用するから「使える」のであり、「器を使うこと」を目的化してもうまくいくはずがありません。

 例えば、工事現場にはさまざまな重機があります。整地するためのブルドーザー、土をすくうショベルカー、土を運ぶダンプカー。それぞれに機能と役割があります。持っている器(知識)に当てはめて仕事を設計することは、ショベルカーを買ったからショベルカーで土を運び始めるみたいなものです。それで「あれ? うまく運べないな……」と悩む。それもそのはず。ショベルカーは土をすくう重機であって、運ぶ重機ではないからです。

 「そんなバカなミスはしない!」と思いますか? しかしこれは、短期間で大量の勉強をした人のほとんどがハマる落とし穴なのです。必ず通る長いトンネルと言っても良いでしょう。どんなに気をつけても、回避するのは容易ではありません。

 ではどうするか。

 できる限り、早くトンネルを抜けるのです。長い間、若いマーケターの成長過程を見てきましたが、努力をして自律的に学ぶマーケターであればあるほど、ほぼ確実にトンネルに入ります。知識に振り回され、簡単なことを難しく考え、持っている器に当てはめて仕事をし、勉強する前よりパフォーマンスが落ちる期間があります。

 回避できないのなら、なるべく早いうちにトンネルに入って、最高速度でトンネルを抜けるほかありません。そのために必要なのは、めげずに実戦し続けることのみです。自分もいつか必ずトンネルに入ること、トンネルに入ったこと、トンネルの中にいてもがき苦しんでいること、ただし適切な努力を続ければ必ずトンネルの出口にたどりつけること、出口にはいままで見たことのない景色が広がっていることをメタ認知しながら走るのです。

打率1割を目指そう

 長く暗いトンネルに入ると、学んだことが実戦で使い物にならず、辛く、苦しく、絶望的な気分になります。「あんなに一生懸命学んだことは一体なんだったんだ」「自信をなくしてしまった」「やっぱり教科書の内容は実戦では使えないのか」と考えてしまいがちです。しかしここでやさぐれてはいけません。「みんなそうだ」「自分だけじゃない」という心構えを持っていてください。

 そして、インプットとアウトプットで頑張ったことが、実戦で使える(使えたと実感できる)割合は1割あれば(まずは)OKと捉えてください。学んだことが100%(10割)使え、現場でのパフォーマンスが劇的に向上すると期待してしまうから挫折するのです。1割使えれば儲(もう)けもの。このくらいの認識でトンネルに入り、その中で使える割合を増やしていけばいいのです。

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