さて、次に疑問が浮かぶのは、なぜ観光産業は他のビジネスよりも多くの非正規労働者が必要になってしまったのかである。そのあたりを、日本銀行金融機構局金融高度化センター企画役の北村佳之氏が端的に指摘しているので引用させていただく。
「旅行需要の季節変動が激しいため、非正規雇用が多くなり、従業員の知識・スキルの継続的な蓄積による労働生産性向上が制約を受けている」(出典:日本銀行「観光産業の現状と課題」2023年9月21日)
ここまで言えば、カンのいい方はもうお分かりだろう。この「旅行需要の季節変動が激しいこと」こそが、筆者が観光業で働く人々の待遇改善のため、GWを廃止すべきだと主張している理由だ。
「旅行需要の季節変動が激しい」というのは、分かりやすく言えば、観光客が大挙として押し寄せるオーバーツーリズムのような時もあれば、閑古鳥が鳴いているようなヒマでヒマでしょうがない時との落差が激しいということである。
これが当たり前となってしまっている観光地のホテルやレストランの経営者は当然、「忙しい時だけ人を雇う」方向に流れる。これが観光業だけが「異様」に、非正規の低賃金労働者への依存を深めてしまっている最大の原因だ。
この負のスパイラルから抜け出すには、旅行需要を「平準化」していくしかない。そこで最も効果が期待できるのが、他でもない「GW廃止」である。
なぜかというと、GWというのは、日本人の「みんなと同じタイミングで休みをとって、みんなと同じように旅行しなくてはいけない」という強迫観念のよりどころになっている制度だからだ。
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