観光業で働く人のためにも「GWは廃止すべき」 こう提言しても、何も変わらなかった理由スピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2024年05月01日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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10年後も同じことを言っているか

 日本は「世界一成功した社会主義」なんて揶揄(やゆ)されるように「みんな平等に苦しい思いをして、みんな平等に同じ給料をもらって、みんな平等に同じ水準の生活を営む」というのが理想とされている。だから、休みの日も「平等に苦しむ」のが当たり前だ。

 乗車率120%の新幹線に乗ったり、渋滞20キロの高速で移動したり、回転寿司に2時間待ちで並んだりして休日なのにヘトヘトに疲れている。つまり、日本の「国民の休日」は、国民みんなが同じ行動をして、同じように苦しむのがデフォルトなので、ちっとも「休暇」になっていないのだ。

 それは今回のGWも同じだ。旅行や行楽地などどこへ行っても大混雑で、連休明けに仕事を再開する時には疲労困憊(こんぱい)という人も少なくないのではないか。

GW、人気旅行先伸び率ランキング(出典:近畿日本ツーリスト)
伸び率ランキングで福井県が1位(出典:近畿日本ツーリスト)

 「国民にみんな同じ行動をさせる」というのは、「人口が増えている途上国」にとってはプラスで大きな成長につながる。高度経済成長期からバブル期までの日本がまさしくそれで、「春節」が巨額な人とカネを動かす中国に当てはまる。ただ、人口が減少している低成長国がこれをやっても、労働者を疲弊させて観光公害を悪化させるなど「マイナス」のほうが大きくなってしまうのだ。

10年後はどうなっているか(画像はイメージ、出典:JR東海公式Webサイト)

 ……ということを、筆者は10年前から主張しているが、なかなかそういう機運は盛り上がらないし、議論にさえもならない。われわれ日本人はなんやかんや言って「みんなで同じタイミングで休んで、みんなで同じところへ押しかけて、みんなで同じように苦しむ」という「平等」だと安心するのだ。

 おそらく10年後もこの季節になれば、「人手不足の観光地に、外国人観光客と日本人観光客が押しかけて大パニック!」なんてニュースが流れているのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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