2024年現在の北陸新幹線・敦賀駅〜新大阪駅間は、福井県小浜市から長大なトンネルを抜けて京都駅、そこから京都府南部の京田辺市松井山手を経由して、新大阪駅に至る「小浜・京都ルート」で計画されている。この決定まで二転・三転しており、経緯をたどって各地の言い分を紹介しよう。
北陸〜大阪間の新幹線計画は1972年の運輸省告示で明記された。大阪側ではフリーゲージトレイン(軌間可変電車)として計画されていた。しかし肝心の開発が間に合わず(のちに事実上の断念)、東京駅〜金沢駅間と同様のフル規格での検討が始まった。
JR西日本は大阪まで全線一括開業を求めていたものの叶わず、敦賀から米原で新幹線に乗り入れるルート(いわゆる「米原ルート」)を希望。米原ルートの地元である三日月大造・滋賀県知事を先頭に、関西の2府6県4市が参加する広域連合も米原ルートを推進した。
一時期は米原ルートで決まるかに見えたが、JR東海が乗り入れに難色を示し、このルートは乗り換え必須に。交渉が難航しそうな様子を察したのか、松井一郎・大阪府知事、井戸敏三・兵庫県知事など(いずれも当時)が次々と米原ルート支持を撤回し、三日月知事も2024年2月13日の知事定例記者会見で「私たちは米原ルートを推してきたが、(小浜・京都ルートに)決めたからにはそのルートをできるだけ早く通していくということに力を注いだ方がいい」と発言。その立場を変えた。
その後、京都ルートは環境アセスメントの問題もあり中断。現在のところ各知事とも先頭に立って敦賀から先の着工・乗り換え解消に具体的に乗り出す様子もなく、「敦賀駅乗り換え問題」は放置されたまま10年、20年と遅れていきそうな気配だ。
ただ、敦賀駅〜大阪間が分断されても、北陸の方々や自治体は、さして困らない。なぜならば、今回の北陸新幹線延伸を機会に、関西から首都圏・東京都へシフトする可能性が高いからだ。
北陸新幹線・敦賀延伸 迫る「対東京シフト」の大転換
なぜ最近の新幹線駅は「巨大駐車場併設」が増えているのか 各地で見えてきた実情と課題
70億円の赤字想定 北陸新幹線・延伸ともに爆誕した「ハピラインふくい」の今後を占う
話し合い拒否で長引く「JR西VS.自治体」の攻防 「乗客1日13人」の芸備線、存廃の行方は?
1時間に90本離着陸――なぜ、羽田ばかり超過密に? 「第三空港」「成田リニューアル」の可能性は
臨海部と東京駅を“ボーン”とつなぐ「新地下鉄」 なぜ運営が「りんかい線」事業者に?
京葉線の「通勤快速廃止」 責任は本当に鉄道会社だけなのか
東京駅から羽田空港がたった18分! 「羽田空港アクセス線」でどうなる? 京急・東京モノレール
ベンチャー航空「トキエア」 “したたか”な戦略も、就航延期を繰り返すワケ
東京BRTは巨大タワマン街「晴海フラッグ」の足になれるか 立ちはだかる4つの課題
総額648億円 JR東の赤字路線、原因は「収入が少ない」だけじゃない
大阪・金剛バス、なぜ全線廃止に? 自治体の責任と運転手の過酷な勤務実態
「入社祝いで400万円」それでも足りないバス運転手 3つの元凶は?
北海道新幹線は「函館駅乗り入れ」なるか? 課題は山積み
北総鉄道、前年の“大幅値下げ”後に「赤字447億円」を完済 実現できた理由は?
100円稼ぐのに「海鮮丼」並みの経費…… 北海道・留萌から「鉄道消滅」の理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング