箕面市が新しい街の開発に力を注ぐ理由、それは「旧来の市街地に開発の余地がない」ことに起因する。
箕面の街はもともと山あいの小さな街(豊能郡箕面村)だった。箕面有馬電気軌道(現在の阪急電鉄の前身)が1910年に箕面線を開業させてから、箕面駅・牧落駅・桜井駅の3駅周辺で開発が始まり、なかでも箕面駅周辺に中心街が形成されていった。
いまの中心街は大正・昭和初期から高度成長期までの地域の成長を支えてきたが、国道171号から離れていることもあって、道路が狭い住宅街も多い。かつ、高度成長期に建設した公団住宅街や商店が多く、何かと再開発がやりづらい。少なくとも、この地域がこれからの箕面市の伸び代となるのは難しそうだ。
一方で箕面萱野駅・箕面船場阪大前駅周辺のエリアは、1948年の萱野村併合で発足した「箕面町」の一部となり、その8年後にさらに東側の豊川村を編入した際に、「箕面市」となった。もともと市域でなかったこともあり、先日まで北大阪急行の終点であった千里中央駅(豊中市)への路線バスでつながる吹田市や、大阪市とのつながりも強かったという。
周辺は未用途の土地も多く、空き物件も大阪市内よりはお手頃だ。箕面市は空いた宅地への転入を増加させるべく、「箕面市子どもプラン」(赤ちゃんの定期健診の助成、小学校低学年からの英語教育やICT教育の導入など)を掲げ、子育て世代の転入による人口の増加を維持してきた。いわば、過去20年間の伸び代であり、これからも伸び代となり得るエリアだ。
箕面市は「中心街は衰退・高齢化。新しい街は発展・子育て世代が中心」という状態が続いており、萱野・船場へのインフラ投資(鉄道延伸)は、バランスがとれた状態での人口維持・税収確保のためにも重要だ。
箕面市の試算では、新駅2駅ともに人口が4500人増加し、人口増や雇用増によって3227億円の経済波及効果を見込んでいるという(箕面市議会・令和5年6月22日定例会にて)。「さすがに盛りすぎ!」と言いたくなる試算ではあるが、現状での新駅周辺を見る限り、少なくとも延伸費用874億円(箕面市の拠出額+国の補助、北大阪急行の負担額などを含む)を回収できるだけのメリットはあるだろう。
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