事業戦略と人事戦略との連動が強調される中、各部門主導によるポジション起点の人事が増えていくことが想定される。ジョブ型という観点ではポジション起点の適所適材異動は合理的であり、当然の方向性だ。ただ、現在すでに人材起点の異動とポジション起点の異動は半々であり、この流れのまま進むとほとんど全ての異動がポジション起点のものになるかもしれない。問題は、ポジション起点の異動ばかりでよいのかという点だ。
[図3]に、人事異動・配置の実務上の優先順位を挙げた。大抵は組織制改廃への対応など「(1)要員確保・要員適正化」の優先順位が最も高い。ローパフォーマーは放置できないので「(2)ミスマッチ解消」や、ポジションによっては「(3)不正防止」のための異動も行う必要がある。昨今では介護などの「(4)個人事情対応」も欠かせない。ここまでは、必要最低限の人事異動ともいえる。
さらに、業績向上のために「(5)マンネリ防止・組織活性化」の異動も行いたいとの各部門ニーズもある。従業員が期待する計画的な「(6)キャリア開発・能力開発」のための異動については、その重要性は重々承知していても、実態としてはなかなかそこまで手が回らないという企業も多いことだろう。
至極当然ながら、各部門主導の人事異動では、計画的な「キャリア開発・能力開発」のための異動よりも、短期的な業績向上のための異動が優先する。人材起点の異動は「個人事情対応」に限らない。計画的な「キャリア開発・能力開発」のための異動は人事部が主導する必要がある。
企業へのヒアリング調査(※1、※2)では、各部門主導の場合、戦力として機能しているミドルパフォーマーは異動配置の目配り対象になりづらいことが分かっている。ポジション起点の異動が大半を占めることはよしとして、人事部は人材起点(適材適所)の異動、特に「中長期視点のキャリア開発・能力開発を目的としたミドルパフォーマーの異動配置(特に部門間異動)」を積極的に主導すべきだ。
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