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デジタル化の先に進めない日本企業 「RevOps」を阻む3つの壁とは?今すぐ取り組むべき、RevOpsのススメ(2/4 ページ)

» 2024年07月22日 15時00分 公開

RevOpsの実行における3つの障壁

 日本企業のDXにおける本質的な課題が整理できたところで、今回のテーマである「日本企業のRevOpsの実行に向けた障壁」について考えてみましょう。

 バックオフィスや製造・開発のような部門で局所的には「効率化」が進んでいるものの、「収益拡大」には足踏みしているという事象は、実際によく耳にする課題です。特に営業組織においては、前述した分断のメカニズムが顕著に働くとともに、DXの第一段階であるデジタイゼーション(アナログデータのデジタル化)もままならないなど、以下のような課題を抱えています。

(1)オペレーションの個別最適化

 営業プロセスは製造プロセスのように工程やアウトプットに一貫した統制が必要なく、各組織が連携せずとも業務が一定成り立つため、各営業組織は個別最適な活動に走ってしまいます。その結果、シームレスな顧客対応や組織間のクロスセルによる収益拡大が進まないため、デジタルトランスフォーメーションを実現する上で大きな課題となっています。

(2)テクノロジー活用の個別最適化

 各組織がそれぞれ個別にテクノロジー導入やカスタマイズを行うため、テクノロジー同士の連携がとれず、データも分断してしまいます。データの形式や定義、構造がバラバラになるため、組織横断でのデータ活用の障壁となっています。

(3)データ蓄積の停滞

 SFAやCRMなどのテクノロジーは活用せずとも業務が一定成り立つため、活用が一向に進まず、結果としてデータ蓄積が滞っているのが現状です。また、特にハイパフォーマーは自身の業務プロセスが確立していることから、新たなシステムの活用自体をデメリットと捉える傾向にあり、それによってそもそも活用に資するデータが蓄積されないという課題が生じています。

 こうしたテクノロジー・データのサイロ化(各部門で別々に管理されること)によって、顧客理解のために必要な営業データが収集できていないのが実情です。その結果、バリューチェーン全体で連続的な価値提供ができなくなってしまい、顧客体験の悪化につながるリスクがあります。

 RevOpsの実行に向けては、前述の日本企業のDXに向けた本質的な課題(DXに伴う分断のメカニズムの理解・コントロール不足)を念頭に置きつつ、上記の課題に対処していく必要があります。

 加えて、伝統的なエンタープライズ企業では、RevOpsの実行難易度は更に上がります。過去に構築された組織・プロセス・テクノロジー・データに関するしがらみが多くあり、各所に存在する「分断」を一つ一つひもとかなければならないためです。

 例えば、ある伝統的な大手製造業が直面した「分断」の例を挙げます。これまでは、重点顧客の全ての購買プロセスに営業担当が張り付くアカウント担当制により、顧客の信頼を勝ち取り続けることで売り上げ拡大に取り組んできました。その中で昨今のデジタルシフトに伴い、営業担当では感知できないデジタル上の顧客への対応が必要となり、新たにマーケティング組織が立ち上がりました。

 しかし、これまで重点顧客を手塩にかけて育ててきた営業担当からマーケティング組織へ「自分の顧客に余計なメールを送るな」という指摘が入り、営業とマーケティング間の対立意識が浮き彫りになりました。デジタル化を推進することで、RevOpsの実行どころか、企業内の「分断」が加速してしまったのです。

 以上が、伝統的なエンタープライズ企業ほどRevOpsの実行難易度が上がる一例となります。

 ではRevOps の実行に向けて、組織・プロセス・テクノロジー・データの統合に向けた機運を高めていくためには、何をゴールに進めていけばよいのでしょうか。

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