さて、「決める」という行為を人間に委ねることで、生成AIはもっと自由に扱えるようになります。
生成AIサービスを使ったことがある読者はご存じの通り、現在の生成AI(ChatGPT plus)は、WordやExcel、PDFの読み取りと出力ができます。RAG(文章生成時にあらかじめ指定した外部データを活用できる機能)や、GPTs(カスタムメイドの専用GPT作成)も利用できます。
私がよく行うデモンストレーションの一つに、地域別・世代別の人口統計データとAED設置場所のデータ(いずれもExcelファイル)をChatGPTに読み込ませ、「新たにAEDを設置するべき場所を考えて」と指示を出すものがあります。
ChatGPTはこれらのファイルを読み取り、分析の戦略を立て、実際に分析し、結果をレポート形式で出力します。さらに、そのレポートをWord形式で出力し、ダウンロードさせることも可能です。
RAGやGPTsの利用も非常に簡単です。多くの自治体からの相談に応じて、議会の過去の発言録を外部データとして取り込み、特定の議論の論点を整理したり、答弁の方針を考えたりする提案を行っています。
ChatGPTで答弁書そのものを作成することもできますが、ChatGPTが出力するのは、あくまでも「意見」であり、最終的な答弁内容を「決める」のは人間側の役割となります。ちなみに、GPTsを用いたカスタムGPTの作成は、個別の費用がかからず、職員が30分程度の作業で十分実用的なものが完成します。
しかし、多くの自治体はこれらフルパワーの機能を使うことができません。理由はいろいろあるのですが、最も分かりやすいのは「OpenAI社への決済手段がない」ことでしょう。ChatGPTなど多くの生成AIサービスは、ドル建て、クレジットカード払いという、日本の自治体にとって難しい決済手段を求めています。自治体は単年度予算会計が原則なので、為替変動のある支払いを嫌いますし、そもそも法人カードを持っていない自治体も多いです。
筆者が関与する自治体では、この問題をクリアすべく、筆者との業務委託契約の中に「生成AIの活用支援」という業務を加えてあり、業務の一環として、筆者が調達したChatGPT plusを使ってもらうようにしています。
当然フルパワーのChatGPTです。カスタムGPTも使っています。
この様子を見ていて感じるのは「プロンプトエンジニアリングの時代は終わった」ということです。もちろん、ChatGPTに適切な回答をさせるべくプロンプトを整理することはやっていますが、最近のGPT-4oは多少不完全なプロンプトでも期待以上の回答を出してくれます。
呪文のような複雑なプロンプトを駆使するくらいなら、目的に特化したカスタムGPTを作って、必要に応じて呼び出す、という使い方が自治体の現場では良いように感じます。
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