NECが社を挙げて進めている価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」。顧客のビジネス変革の実現に向けたDX推進事業「NEC Digital Platform」を進化させたブランドとして打ち出そうとしている。
背景には、業界を問わずに急速に加速している企業のDXがある。NECは年商300億円以上の企業に対し、毎年「NEC DX経営の羅針盤」という調査を実施。調査項目は「業務のデジタル化」「意思決定のデジタル化」「接点/チャネルのデジタル化」「サービス/製品のデジタル化」「バリューチェーンのデジタル化」「ビジネスモデル変革」の6つだ。
このうち「意思決定のデジタル化」では、前年と比較して企業のDX着手率は49.6%から95.5%に激増。「バリューチェーンのデジタル化」は35.7%から85.1%、「ビジネスモデル変革」は39.7%から85.1%に上昇している。倍以上になっている項目もあり、この1年で、いかに企業のDXへの関心が高まっているかが分かる。
「業務のデジタル化」は84.4%から100.0%、「接点/チャネルのデジタル化」は67.7%から97.0%、「サービス/製品のデジタル化」は47.0%から92.0%に、いずれも上昇している。
「意思決定のデジタル化」が進んでいる要因として、NECはデータドリブン経営の成功事例が出てきた点を挙げている。最も伸びた「バリューチェーンのデジタル化」における要因は、物流の「2024年問題」が関係しているという。法改正により、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されたため、否が応でも企業は物流の効率化を進めなければならない外圧的な背景がある。
一方DXに着手し、推進しようとしても、課題はまだまだ多い。一番は企画・実行部門における人材不足の問題だ。
DX推進の課題として「DX企画部門の人材不足」を挙げた企業は、64.2%から77.6%に上昇している。既存の社内システムからの更新が課題となっている企業も多い。「既存情報システムの老朽化」を課題に挙げた企業も、37.3%から46.3%に上昇している。
こうしたDXの課題をより本格的に解決しようとしているのが、ブルーステラだ。ブルーステラ誕生の背景を、NECのBluStellarビジネス開発統括部の岡田勲統括部長は、こう説明する。
「顧客企業の課題は、単なるデジタル化にとどまりません。データをいかにして経営に生かしていくのか。組織や会社の体制・風土をどう変えていくのかが今後の課題になると思います。ブルーステラでは顧客ごとのゴールに対し、当社がどのようにサポートし、伴走していくべきか。NECがその意思表示としてブランド化したものになります」
このブルーステラの目的を実現していくためには、顧客企業よりも先にNEC自身が変わらなければならない。NECでは社内DXの取り組みとして、社員証のデジタル化や顔認証を積極的に導入(NEC、社員2万人に顔認証の「デジタル社員証」導入 どんな変化が?参照)。「経営コックピット」と呼ばれるダッシュボードによるデータドリブン経営を進めている。これらは、自社をゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」の考え方に基づく(NEC、デジタル社員証で社員2万人を“顔パス化” CIOに聞く「組織をDX」させる狙い)。
「NECがデジタル技術を使ってどんな価値を提供していくのか。何を目指していくのかを顧客と共に検討していきます。それにはテクノロジーだけではなく、人材育成も重要になってきます。われわれがSIer(エスアイヤー、システム開発の全ての工程を請け負う受託開発企業)からバリュードライバーに変わろうという決意が、ブルーステラになります」
ブルーステラでは「戦略コンサル」「サービスデリバリ」「運用・保守」とオファリング(提案)を商材にしていく。DXを進めるための人材の提供や、人材育成のブログラムも顧客に提供していくという。
ブルーステラの全体構造としては「Agenda」「Technologies」「Programs」の3つを柱に据えた。Agendaでは顧客のDX実現構想・成功ストーリーと事例、Technologiesでは顧客へ提供するオファリング・商材、Programsではブルーステラを支える社内外の取り組みで構成している。こうした知見を、いかにして顧客に届けるかが、ブルーステラの軸となる。
そこでブルーステラが重視するのが「価値創造シナリオ」だ。このシナリオについて、岡田統括部長はこう説明する。
「シナリオとは、顧客の課題やアジェンダに対し『こういうゴールが必要になるだろう』と、ある程度の想定をしながら進める筋道になります。顧客のゴールに向かい、どのようにサービスを提供していくのか。サービスをどのような順番で提供していくべきかを、型化したものになります」
ブルーステラのシナリオは、上流から「戦略コンサル」「サービスデリバリ」「運用・保守」の3つの主な行程に分かれている。
「上流であるコンサルからそれを実現するサービスデリバリ。さらにサービスを提供するだけでなく、それを実際に顧客の中で運用していきます。運用だけでなく、その運用の中で見つかった課題を解決したり、よりよく運用が回るようにするためのサービスも提供したりしていきます。こういう形で型化をし、われわれとしてのノウハウを集約したシナリオを提供していくことを考えています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング