購買意欲の下がる言葉が持つ要素として、まずは「主観的」だということがあげられます。
「私も同じ商品を買いました」「私だったら、これを選びます」「今買わなかったら後悔するかもしれません」といった、店員の意見を強調した声かけは、顧客にとって具体的な判断材料に乏しく、店員の押し付けがましさを感じやすいため、購買意欲を下げる要因となり得るようです。
特に「私」「私的には」といった表現は、店員自身の視点に基づいたものであり、顧客のニーズや期待に応えられていない可能性が高いようです。顧客が求めているのは自分自身に適した商品情報であり、店員の主観的な意見がそれを満たすとは限りません。
そのため、顧客に商品を選ばせる際には、客観的で具体的な情報提供が重要となります。つまり、顧客に対しては自身で判断する機会を与え、その選択を尊重する姿勢が求められます。よって、購買意欲を高めるためには、顧客中心の視点に立った、具体性と客観性を持つアプローチが不可欠のようです。
続いて「認識の齟齬」が挙げられます。
「少し量が多いですがよろしいでしょうか」「時間がかかりますがよろしいでしょうか」「そちら店頭に出している商品のみで……」といった表現も、顧客にとっての購買意欲を損なう要因となり得るようです。
顧客が認識していた情報と異なることが伝わると、顧客は少し後ずさりしてしまう傾向にあります。
このように情報を注文後や購入決定の直前に伝えることは「事前に知っていたら選ばなかったかもしれない」という感情を引き起こすため、顧客は不安や疑念を抱くことがあります。特に時間や量に関する情報は、顧客のニーズや期待に直接影響を与えるため、最初から明確かつ適切に伝えることが求められます。
そのため、認識の齟齬を防ぐには、正確でタイムリーな情報提供が必要です。顧客が安心して購買決定を行える環境を提供することが、信頼関係を築き、満足度を向上させる鍵となるようです。
その他にも「今入荷したばかりの商品です」などの、あからさまに売りたいという下心が見える発言や「いかがですか?」と急かされる言い回し、「〇〇よりもいいですよ」と競合を落とす発言や、「たぶんそのくらいです」といった抽象的なアドバイスなども購買意欲を下げる傾向にあることが分かりました。
以上のように、購買意欲の高まる要素と下がる要素をそれぞれ挙げましたが、今回のインタビューを経て、顧客への声かけにおいて「顧客の課題を特定し、解決すること」が重要なように感じます。顧客が実現したいと思う理想を明らかにして、理想と現状の差分としての課題を特定し、商品・サービスを用いてどのように課題を解決していくか。そんな個人ごとにカスタマイズされた課題解決型の声かけが必要とされているのではないでしょうか。
逆を言えば、その課題が自分で理解できている人にとって、声かけは不要のものであり、あまり求められない世の中になってきているのかもしれません。その課題の見極めこそが、効率化された接客サービスが増えていく中で、接客サービスのある店舗が生き残る要因となるように思えます。
以上を踏まえ、“最強の売り文句”を考えてみました。
「購入を悩んでいるようでしたら、ネットでも買えるので、ゆっくり考えてみてください。ただ、テレビで紹介されたこともあって、売り切れてしまう可能性が高いので、早めにご決断された方がいいかもしれませんよ」
このように、最大限相手に寄り添い、他でも購入できる選択肢を与えつつも、限定性や信頼性などの要素を散りばめた声かけで購入意欲を高めることができるかもしれません。
株式会社 九州博報堂 BXP局
マーケティングプラナー/ヒット習慣メーカーズ
2021年 九州博報堂に入社。そろそろ脂の乗りたい4年目。
福岡のはずれでスローライフ満喫中。
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