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「効率の価値」VS.「ムダの価値」 ビジネスには両方が必要といえるワケ令和の無駄学(3/3 ページ)

» 2024年09月19日 08時30分 公開
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効率と無駄の使い分けのバランスが鍵に

 ここまで、効率の価値は、主体性を省くことで時間的・金銭的な余剰を受け取れることにあり、無駄の価値はより主体的で、愛着・所属・学びを感じられることにあるのではないかとお話してきました。

 しかし、冒頭でもお伝えしたように、サービスを提供する企業にとっては、どちらがいいというわけではなく、適切に使い分けていくことが大切です。その好例になるのが、LINEで利用できるクロネコヤマトのサポートチャットボットです。スマホひとつで受け取り時間や場所の変更、再配達依頼ができるようになる便利で効率的なサービスですが、チャットボットに対し「○○にゃ」などとネコ語で話しかけると、返事もネコ語で返ってくるというギミックが「かわいい」「積極的に使いたくなる」と人気を博し、ユーザーとサービスのつながりを強固にしています。

 チャットボット自体は別にネコ語である必要はありませんが、愛着を持てるようあえて無駄を仕掛けたことで成功した例です。このように、効率の価値を提供しているサービスであっても、無駄の要素を取り入れることでうまくケースは多く、企業としてはその使い分けを見極めるセンスが今後ますます重要となってきそうです。

 今回は、効率化が価値になる点と無駄が価値になる点の違いについて、そしてその使い分けの重要性についてご紹介してきましたが、いかがでしたか? 

 身近な例や成功したビジネスケースを見てみると、一見無駄と呼ばれるものが、実は受け手の主体性に作用していて、新しい関係や文脈を生み出す可能性があるということは、効率化一辺倒の世の中に差し込む希望ともいえるのではないでしょうか。私自身、本稿を執筆しながら、改めて無駄の魅力に気付かされるいい機会となりました。果たして次はどんな無駄学でしょうか? 次回もお楽しみに。

著者紹介:山本健太

株式会社博報堂クリエイティブ局

イノベーションプラナー/クリエイティブストラテジスト/ヒット習慣メーカーズ

2017年に博報堂入社。以来、戦略とクリエイティブの領域を横断して経験。

音楽と写真をこよなく愛する。

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