そもそもサントリーの祖業といえば、ビールでもウイスキーでもなく、ワインである。同社を創業した鳥井信治郎が1899年に「鳥井商店」を開業した際は「ぶどう酒」の製造販売を行っていたし、1907年に発売した「赤玉ポートワイン」(現:赤玉スイートワイン)のヒットが、その後に展開したさまざまな事業の礎になっている。
1936年には「日本のワインの父」と呼ばれた川上善兵衛氏と協力して、山梨県・登美の丘(現「サントリー登美の丘ワイナリー」)でぶどう園の経営を開始。ぶどうの栽培とともに、醸造から熟成までをワンストップで手掛ける体制を整えた。
1952年に農業者以外の農地取得を制限する農地法が制定され、ワイナリーが農地を持つことが難しくなったものの、サントリーは制定以前に登美の丘の農地を取得していたため、影響はなかったという。一種の先行者利益を生かし、1975年には同社によると日本初となる「貴腐ぶどう」の収穫に成功するなど、ぶどうの栽培とともにワイン醸造も進め、日本ワインの生産者としての立ち位置を確立していった。
その後、構造改革特区をきっかけに農地法の規制が緩和し、ワイナリー自らが農地を持てるようになり、日本ワインの勢いが徐々に伸びてきた。サントリーの調べでは2024年に稼働している国内ワイナリーは約500軒、2015年比で約2倍である。
その勢いを反映するように、日本ワイナリー協会などが2003年から開催している「日本ワインコンクール」では、出品があったワイナリー軒数、点数が2024年は過去最多を記録。国際的なコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」でも、金賞以上を受賞した日本ワイン品数が2015〜19年は13点だったところ、2020〜24年は20点に増えており、活況を呈している。
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