――Lumadaは、日立の組織改革まで入っている点が特徴でもありますね。
重田: 日立に限らず、日本の製造業ですと、それぞれの事業部やBUが、PL(損益計算書)を持っていると思います。縦割りの側面が強い中で、日立では社内でLumadaというものをしっかりと位置付けることで「みんながこういうものを目指してやるんだよね」という方針が分かるようになりました。
決算でも、Lumada事業と非Lumada事業を明確に分けていますし、IRでも対外的にLumada売り上げの目標値を掲げています。われわれとしても、Lumadaはデータやテクノロジーを使って顧客のビジネスをどう革新していくのか、どういう方向に舵を切っていくべきなのかを、トップが明確に打ち出しています。
ここは社外の顧客とも約束しているところがあるので、社員全員がLumada 、つまりデジタルやデータの力を使って、顧客のビジネスを革新していきたいという考え方になっていきます。そのために、各BUに「CLBO」(チーフLumadaビジネスオフィサー)という、Lumadaを推進する人をアサインしています。このCLBOによって、各BUではLumadaビジネスと、非Lumadaビジネスの区別を財務的に定量化し、Lumadaがきちんと収益化できているかまで見ています。
当社ではLumadaによって売り上げがここまで伸びました、利益がこれだけ上がりました、という数値を分かるようにしていますので、PLを背負っている各BUの考え方もLumadaによって変わりつつあります。こうした取り組みは、やはり社内改革とセットだと思います。
――日立は、2024年度のLumada関連の売り上げを全体の29%以上、将来的には50%以上にしていく目標を出しています。このLumadaの売上高というのは、どのように定義しているのでしょうか。
江口: 各BUに先ほど申し上げたCLBOという役職がいます。このCLBOが、まず自分たちのビジネスの中でLumada事業は何かを特定し、それを報告する形を取っています。データを活用している事業だからすなわちLumada事業に認定されるかといえば、そうではありません。ただ単にデータ活用をしているだけではダメで、そのデータ活用が各BUの事業戦略や顧客の課題解決に結びついていなければなりません。
そのため、何がLumada事業になるかは、BUの中の戦略的な事業が選ばれることが多い特徴があります。ここにはさまざまな思惑も入りますが、何がLumadaなのか、という意識を各BUが持つことによって、事業がより戦略的に動いている面もあると思います。
――近年では、他の国内大手メーカーも同様のブランドを立ち上げる動きが相次いでいます。どのように見ていますか。
重田: 他社との比較は難しいところもありますが、一つ言えるのは、われわれは「老舗」であることはいえると思います。日立の場合「IT×OT×プロダクト」が強みだと捉えていて、デジタルやITだけでなく、家電から電力、鉄道までを事業として持っています。これはLumadaの強みだと考えています。
日立は8年にわたってLumadaを推進しています。その間、実はLumada自身も徐々に変わり続けています。他社もそれぞれの強みがありますから、恐らく他社のブランドも、その強みに応じて徐々に変わっていくと思っています。
――Lumadaの強みについては、どのように捉えていますか。
重田: Lumadaの理解の浸透はまだこれからですが、8年続けてきてLumadaという名前自体の認知度は上がってきていると思います。これは経営層が変わっても、Lumadaが変わらずに続いている点が大きいと思います。これは前職で経営コンサルとしてさまざまな企業を見てきた経験から思うのですが、通常、社長などのトップが交代すると、前任者を否定して新しいことを始める例がよくあります。その過程でブランドの名前が変わることも珍しくありません。
代替わりしても、Lumadaというブランドを大事にし続けてきたことが、Lumadaの強みなのではないかと思います。変わらないからこそのブランドでもありますし、大きな目線としての成長戦略がそこにあるとも言えます。国内製造業の「老舗」ブランドとして、Lumadaを今後も進めていきたいですね。
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