――漫画原作を劇場アニメにしていく上で、難しい部分もあったと思います。漫画も映画もどちらも興行的に成功させられた背景には、どんなポイントがあったと思いますか?
漫画のヒットの要因は、(原作の)藤本さんの描かれた作品が非常にハイクオリティーなものであったことが大きいと思います。アニメーションでは、漫画をただ動かすだけではなく、アニメーションとして再編集し、押山さんの考えるアニメとしての魅力がふんだんに詰まった作品にしていただきました。漫画の良さとアニメの良さ、それぞれを追い求めた結果、正しくお客さまに響いた。だから多くの人に届いたのだと思っています。
――私も映画を拝見させていただきましたが、登場人物が漫画を制作する過程と共に、キャラクターが魅力的に描かれていると感じました。
(一生懸命に漫画を作り続ける登場人物と同じように)視聴者の皆さんも、朝から晩まで仕事をするなど、それぞれに夢中になって自分の人生を費やしているものがあると思います。そういう方々に感じるものがあったから、たくさんの人に響いたのかもしれないと感じています。
――押山監督と原作者の藤本氏とのミーティングの場も設定したと聞きました。編集者として意識したことはありますか?
これは『ルックバック』に限った話ではなく、原作者によって、こだわる箇所やアニメにする際に残してほしいポイントなどは全く違います。バラバラです。
だからアニメにするときには、原作者のこだわりや、作品に込めた思いなどと、(アニメの)監督やプロデューサーの考えとを、すり合わせた方がいいと考えています。ただ『ルックバック』に関しては「こうしてほしい」とか「こうじゃなきゃダメ」とかいうお話は全くしていません。
「原作ではこうだった」「(原作者は)こんな風に思っています」ということを伝えた上で「押山さんの思い通りに仕上げていただきたい」というコミュニケーションをしていました。もちろん作品によっても変わるのですが、本作ではそんな風にコミュニケーションを取っていたと思います。
――林さんは『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』といった漫画を始め、サイバーエージェントとの漫画家育成プロジェクト『MANGA APARTMENT VUY』(マンガアパートメント ヴイ)の寮長兼プロデューサーを務めるなど、さまざまな意欲的な仕事に取り組んでいます。編集者の仕事の可能性をどう考えていますか?
僕の仕事はまず、漫画家さんと共に面白い漫画を世に届けていくっていうのが、最初にあります。原作の魅力を伝えようとする時には、『ルックバック』のようなアニメーション映画や、実写の映画やドラマ、舞台といろんな形にしていきます。ただ何にせよ、根幹にあるのは「良い作家さんが良い作品を作る」ということです。
基本的にはそれを、編集者として愚直に丁寧にたくさんやっていこうと思っています。広げ方については、自分なりの経験値は、たまってきています。アニメにする時は、こういうコミュニケーションを取ってくべきだとか。監督やクリエイターとはこういう話をすると、クオリティーが上がる可能性が高くなるとか。そういった工夫をしながら、やれることは全部やっていきたいと考えています。
「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
『ジャンプ』伝説の編集長が、『ドラゴンボール』のゲーム化で断ち切った「クソゲーを生む悪循環」
ドラゴンボールの生みの親 『ジャンプ』伝説の編集長が語る「嫌いな仕事で結果を出す方法」
『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか
『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【前編】
『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【後編】
『ジャンプ』伝説の編集者が『Dr.スランプ』のヒットを確信した理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング