クルマに限らず、楽であることや快適性ばかり追求すると、移動の楽しみや達成感も薄れていく。ある程度、体を使い、知恵を使い、目的地に到着してこそ満足感が高まるというものだ。
けれども実際は、より楽に運転ができて経済性が高く、安全なクルマが売れる。それはユーザーに訴求しやすく、買い替えを促進しやすいからだ。
そうしてクルマの運転が簡単になり、安全性が高まったことで、雑で身勝手な運転をするドライバーも増えている印象がある。
曲がると同時にウインカーを操作する(ウインカーを出さないケースも)。ボディが大きいからとセンターラインギリギリまで寄って走行する(わずかに越えるケースもある)。一時停止や徐行を忘れたドライバーの運転を見かけることも珍しくない。前のクルマだけを見つめて運転し、とっくに周囲は暗くなっているのに無灯火で走行を続けるドライバーもいる。
もちろんある程度のルールを守って安全に運転しているドライバーが大多数ではあるが、そうなってくるとクルマは単なる移動手段へと成り下がっていく。完全自動運転になれば、ある程度問題は解決するが、それは自分専用のタクシーを持つようなものだ。便利だが、そんな乗り物に愛着が湧くだろうか。
クルマの機能がソフトウェアに集約されていくと、運転の自動化も伴って単なる移動手段となっていく。移動中にPCで仕事をこなす人にとっては効率的だが、それならタクシーでいい。自家用車の需要をどう維持していくのか(画像:Adobe Stock)運転しないで済むなら、その方がありがたいと思っているドライバーもかなりの割合を占めるだろう。交通事故や違反のリスクから逃れるメリットもある。運転が苦手なドライバーだけでなく、運転を面倒だと考えているドライバーも存在する。
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