インタビューを通して印象的だったのは、銀行とカードという従来は別々に運営されてきたサービスが、「Olive」においては根本から融合している点だ。カードと銀行が同じ金融グループに属していても、多くの金融機関では縦割り運営が一般的だ。しかし「Olive」では、どこからが銀行でどこからがカードなのか、ユーザーにはもはや区別がつかないレベルで一体化している。
この提供者側の論理ではなく、ユーザー体験を起点にしたアプローチこそが「Olive」の大胆な挑戦であり、急速な普及の原動力となっている。伊藤氏が繰り返し強調した「お客さま起点」という言葉は、理念にとどまらない戦略として機能しているようだ。
伝統的金融機関の多くがリテールよりも法人部門を得意とする中で、個人向け市場はネット銀行などに徐々に侵食されてきた。その流れに対してSMBCグループは、「金融をメインに置く」という伝統的強みと「決済」という現代的接点を組み合わせた戦略で応えている。
ただし、ポイントと決済の真の融合や保険分野への展開など、伊藤氏が語ったビジョンの多くは、まだ道半ばだ。次のマイルストーンである「5年で1200万アカウント」という目標に向けた進化に期待したい。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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