――今後の映画業界を考えると、人材育成が不可欠です。少子高齢化が進み、日本映画の相対的な位置も変化しています。この20年で日本映画がどう変わったと感じますか。また、これからの課題はどこにあるとお考えですか。
私自身、思っていた以上に海外、特に米国が日本のコンテンツに強い関心を持っていることを実感しています。アカデミー賞を受賞したあと、さまざまな監督やプロデューサーと話す機会がありましたが、最初はリップサービスかと思うほど日本への興味を口にするんです。でも話を重ねていくうちに「これは本気だな」と感じるようになりました。
米国では、もう物語のパターンが出尽くしてしまい、ハリウッドは安全策ばかりをとる結果、どの作品も似たり寄ったりになる傾向がとても強いのだそうです。だからこそ、日本人のちょっと跳ねた発想力や、独自性が非常に新鮮に映るようです。アジアの作品を見ることもNetflixやAmazonプライム・ビデオなどの配信サービスなどで日常的になっています。今がまさに勝負どころだと思います。
『ゴジラ-1.0』もそうですが、『SHOGUN』のような作品が米国で大ヒットし、日本人から見ても渋いと思うような内容が、米国の観客にしっかり評価されて大きな成功を収めています。こうした状況がいつまで続くかは分かりませんが、今のうちにこれを足がかりにして、次の段階へ進んでいく必要があると感じています。
日本の映画産業は正直なところ、じり貧の状況です。かつては国内市場だけで十分に成り立っていましたが、今はそうもいかなくなっています。香港映画や韓国映画のように、海外市場を視野に入れなければ成り立たない時代になってきました。そろそろ日本映画も海外に出ていかないと、帳尻が合わなくなってしまうと思います。
また、スタッフ全員がもう少し経済的に恵まれた生活を送るためにも、外資をうまく取り入れていく必要があると強く感じています。これは冒険であり、失敗することもあるかもしれません。今は風向きが良いので、ぜひ挑戦してみる価値があると考えています。野球で大谷翔平選手をはじめ、日本人選手が世界で活躍しているように、映画でも日本人が中心になって世界で勝負できる時代が来ています。今こそ手を広げていくチャンスであり、私たちにはその責任があるのではないかと思っています。
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