鳥貴族はなぜ生き残れたのか さくら水産と分かれた“居酒屋の十字路”スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2025年06月11日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

“激安居酒屋”「鳥貴族」と「さくら水産」の違い

 なぜ、同じ激安路線にもかかわらず、さくら水産の値上げでは大幅な客離れが起き、鳥貴族は客離れが起きなかったのか。

 鳥貴族の場合は、ちゃんと「付加価値」を高めてきたからだ。

 よく誤解されるが、鳥貴族を一躍有名にした「全品280円均一」のシステムは、「採算度外視で激安に走った」わけではない。

 ビールもおつまみも全て同じ価格にするという当時、他の居酒屋にはないシステムによって、その辺の居酒屋にはない「付加価値」を提供したのだ。しかも、原価率の低いものと高いものをうまくミックスして、全体で利益が出るように設定した価格が「全品280円」なのだ。とにかく客を呼びたくてテキトーに値付けしたわけではない。

鳥貴族のもも貴族焼(たれ)出典:公式Webサイト

 このように採算をちゃんと考えた上での「激安」なので、原料高騰や人件費アップに合わせて価格も上がっていく。そうした価格改定に合わせて鳥貴族がしっかりとやっているのは、メニューを増やしすぎず「焼き鳥」に特化するなど、ブランド価値をキープしていることだ。

 もちろん、そういう企業努力をしても「全品390円? こんな高級店にもう行けるか! 280円に値下げするまで二度と行かないぞ」という客は、一定数いる。SNSで「久々に店に行ったら値上げのせいで閑古鳥だ」とか「値上げしたのに味が落ちた」とかバッシングする人もあらわれる。

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