さくら水産の代名詞でもある「500円ランチ」は、採算を度外視していた。先ほどの記事によれば、2000年代から純利益は10%前後だったそうで、コロナ禍以降は赤字だったという。
では、なんでそんな無謀な経営をしていたのかというと、夜の居酒屋へ「誘導」するためだ。よく飲食店の繁盛の秘訣(ひけつ)として「赤字覚悟のメニューで客を呼び、売り上げをアップさせる」というテクニックが語られる。それをランチでやろうとしたわけだ。
しかし、これが衰退の第一歩だった。
想像していただきたい。500円でごはんや味噌汁がおかわり無料の激安居酒屋に夜も行ってみて、普通の価格だったらどう感じるだろうか。「なんだよ、安いのはランチだけで夜は普通の居酒屋じゃん」とガッカリ感のほうが大きくならないか。
実際、さくら水産の夜の客単価を見ると、2000年代は1800円ほどだった。このように昼も夜も「激安」のイメージが定着した居酒屋が、「高価格帯へのシフト」を打ち出しても、なかなかうまくはいかない。
冷静に考えてみれば当たり前だ。「採算度外視の激安」に引かれて常連客になったような人は、味やサービスよりも「安さ」を重視する。だから、値上げの動きがあると潮が引くように、客足は遠のいていく。そうなると、店としては客離れを恐れるあまり、「採算度外視の激安」へどんどんのめり込んでしまう。
つまり、さくら水産は「500円ランチ」をきっかけに、もはや自分たちの意思では這い上がれない「激安の無限地獄」に身を落としてしまった……ともいえる。
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