ただ、それは「一過性」に過ぎない。筆者は危機管理が本業なので、これまでマクドナルドや鳥貴族など企業の値上げ後に起きるバッシングや不買運動を多く分析してきた。そこで分かるのは、人件費アップや原材料高騰という外的要因での値上げは、メディアが大騒ぎをして瞬間風速的に客足が落ちることがあっても長くは続かないということだ。
SNSでほんの一握りの「偉そうな客」が「もう終わりだな」「安いから行っていただけでもう誰も行かない」などと誹謗中傷するだけで、現実世界には大した影響がないのだ。
そのあたりは「なぜ『鳥貴族』の値上げは、1回目で批判されて、2回目は無風だったのか」(ITmedia ビジネスオンライン 2022年12月27日)の中で、詳しく分析しているので興味のある方はお読みいただきたい。
採算度外視の激安によってたくさんの客を集めて、「薄利多売」で成長していく。このようなビジネスモデルは高度経済成長期にたくさんあったし、それなりに成功した。
なぜかというと、生産年齢人口、つまりメイン消費者の絶対数が右肩上がりで増えていたので「多売」が成立していたからだ。
しかし、生産年齢人口は1995年をピークにガクンと減っている。さくら水産が店舗を増やしていた2000年は8622万人だったが、2015年には7735万人と887万人も減っている。「採算度外視でも客を集めればなんとかなる」という時代は、とっくに終わっていたのだ。
加えて、多くの席数を擁するチェーン居酒屋業態にトドメを刺したのは「コロナ禍」だ。
そう聞くと、「三密を避けろ」「医療従事者を守るためにステイホーム」という社会の同調圧力が強まったことで、「夜の街」がやり玉に挙げられたからだと思う人が多いが、実は致命傷になったのは、日本全国の働く人々が「不都合な真実」に気付いてしまったことが大きい。
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