なぜ「鳥貴族」の値上げは、1回目で批判されて、2回目は無風だったのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2022年12月27日 10時51分 公開
[窪田順生ITmedia]

 「値上げ企業」が、さながら反社会的勢力のように叩かれている。

 2022年10月、1皿10〜35円という値上げに踏み切ったスシローは深刻な客離れが起きている――。などとさまざまなメディアに報じられ、ネットやSNSでも「自業自得」「サイゼリヤを見習え」と厳しい声があがっている。

 同じく、10月から値上げによって、1皿100円(税別)の商品が消滅した「くら寿司」に対し、「ひどい! もう行かない」などの不満の声があがっていて、10月、11月ともに既存店の客数が前年割れになっている。

スシローもくら寿司も値上げ(出典:プレスリリース)

 「値上げは消費者を裏切る罪深い行為」という日本の現実は、さまざまな調査でも浮かび上がっている。例えば、民間のシンクタンク「百十四経済研究所」が、物価上昇が香川県内のうどん消費に与える影響について調べたところ、値上げの影響でうどん店に足を運ぶ回数が、昨年よりも26%も減少していたとして、こんなことを言っている。

 「おいしくて安いことがさぬきうどんの特徴でもあるので、価格がどんどん上がっていくと県民がうどんから離れていく可能性もある」(NHK NEWS WEB 12月6日)

 ……という話を聞くと、「バイトの給料を削ってでも、値上げだけは死んでも避けなくては」と決意をあらたにしている飲食店経営者の方も少なくないだろう。中には、原料価格の高騰を受けて、チューハイの焼酎をこっそり薄くしたり、おつまみの分量を減らしたりという、「ステルス値上げ」でなんとか乗り越えなくてはと知恵を絞っている方もいらっしゃるかもしれない。

くら寿司の115円メニュー(出典:プレスリリース)

 ただ、個人的には「値上げ」はそこまで恐れるものではないという気もしている。確かに値上げの当初は客足も離れるだろう。「がっかりだ」「もう行くのはやめた」など心ない言葉もかけられる。評論家気取りの人間は、「経営者失格だ」「だから言わんこっちゃない。なんで値上げなんかしたんだ」なんて上から目線でバカにしてくるだろう。

 が、そんな「逆風」は長くは続かない。その店の「強み」がしっかりとあれば「残る客」もちゃんといる。値上げが正当なものだと理解をすれば離れた客も戻ってくるし、その後も値上げを継続しても叩かれなくなる。

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