ただ、そんな「カスハラ」的な日本の顧客にもいいところはたくさんある。その代表が国内外の多くの有識者が指摘している「忘れっぽい」ところだ。例えば、初代内閣官房安全保障室長だった危機管理評論家・佐々淳行氏は「危機管理 (公務員研修双書)」(ぎょうせい)の中で、日本人の気質をこのように端的に述べている。
「熱しやすく冷めやすい、忘れっぽい淡白な国民性」
これは消費者のマインドにも当てはまる。「値上げ」と聞くと頭にカッと血が上って「もう行きません」「庶民の敵だ」とボロカスに叩く一方で、冷めやすいのでほどなくすると、そんなことがあったのかというほど穏やかになる。
そして、忘れっぽいので、あれほど「高い」「もう行かない」と怒っていた店にいく。そして、そこが再び値上げをしてももはや関心すら示さない。
その代表がマクドナルドだ。実はかつて「100円マック」なんてメニューがあって、ハンバーガーは「100円」と相場が決まっていた。ここを超えたら大ブーイングで、「高級路線」「庶民切り捨てか」「マック終わったな」などネットでボロカスに叩かれるという時代があった。評論家やコンサルタントも「判断ミス」だと批判していた。
しかし、そういう声を受け流しながら、マックはじわじわと値上げをして、ハンバーガーは130円まであがって22年9月30日からは150円にまで値上げされた。チーズバーガーも180円になった。もちろん、怒っている人はたくさんいる。「もうマックはいかない」と嘆いている人もいるのは事実だ。しかし、ご存じのように今のマックで「値上げで客離れ」など起きていない。
日本では確かに「値上げ」は客数減や売上減につながるものではあるのだが、その影響がいつまでも続くわけではないのだ。特に「価格競争」だけで勝負をしていない商品やサービスの場合、「値上げ」を執拗(しつよう)に叩く顧客が離れたところで、実は大して痛くない。この手の人たちは「安さ」だけで購入をしていただけで、ロイヤリティも高くないので、どのみち「リピーター」や「ファン」にはならないからだ。
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