AIエージェントの台頭によって、DX時代に蓄積したデータ利活用の在り方が転換点を迎えている。DX時代には、部門や形式に関係なく膨大なデータを一括で「データレイク」と呼ばれる大きな貯蔵庫に集約。そこから必要な情報だけを取り出して目的ごとに整理し直し、分析や業務活用にあてる方法が広く採用されてきた。
しかし最近では、業務や部署ごとの利用ニーズが多様化し、AIエージェントを活用する場面が急速に拡大している。各エージェント単位で個別のデータ基盤を用意することは、数や用途が飛躍的に増える現状ではコストや運用の面で現実的ではなくなっている。
従来型の一元管理と小分け活用というやり方そのものが転換点を迎え、AI時代の新しいデータ設計・管理の考え方が求められている状況だ。こうした中ソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長でソフトバンク取締役創業者の孫正義氏は、「年内に10億のAIエージェントを作る」という目標を宣言した。だが、そのデータ管理の在り方としては、従来通り「10億エージェントごとにそれぞれ小規模データベースを設けることは非現実的」と牧園CIOは指摘する。
こうした課題を解決するため、まず個人や業務ごとにデータのラベリングを徹底し、どのデータを誰に提供するかを動的に管理する必要が生じている。さらに、プライバシー保護の観点からは匿名化データの整備が不可欠だ。AIにとってデータそのものが不可欠な資源であり、構造化も推進するなど、データ基盤全体の再構築が急務となっている。
このようなAIエージェントの台頭により、企業は新たな価値創出に挑戦する機会を得ている。一方で意思決定の委譲範囲や業務の選定、運用ルールの整備など、各企業が今まさに方向性を選択する局面にある。
牧園CIOも最後に、「AIにどの業務を任せるのか、ルール整備を誰が担うかといった選択が、10年後の企業価値に直結する」と話す。企業がAIエージェントをいかに活用し、企業として変革の道を選択するか。その決断が、未来の競争力と価値を左右する時代がすでに始まっている。
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