弘中: トップ社員の方の「属人的プロセス」はどのように言語化し、AIに共有しているのでしょうか。
楠: 私たちは「コンテクスチュアル・エンジニアリング」を重視しています。
代表の田部が年間100回規模で行う30分の壁打ちのやり取りを、そのままAIに学習させる。「問い→応答→思考」の流れまで記録されるので、「なぜそう考えるか?」という文脈がにじみ出るんです。
知識を単純に集約(プロンプトの型化)するだけでなく、思考の型化と文脈の付与まで行うことで、AIのレベルが段違いに上がります。
弘中: ノバセルのAI活用では“人にシステムを合わせる”発想が強い印象があります。
楠: 両輪ではありますが、SaaSをベースにしたDXは「理想のプロセスに人を合わせる」ことで成果が出ますが、日本では組織変更や業務変更への抵抗が強くあります。AIも似た事情がありますが、トップランナーの型をAIに学習させ、他の人がその型に“合わせて”業務を変える方が速く、再現性も高いと考えています。
フレームでいえばPOD/POP/POF分析(※)の考え方に近い。汎用AI(POP)は同質化に寄りやすいですが、PODの源泉は「属人性のAI化」にあります。たとえば停滞していた取引先が特定の人の提案で急に前進するということがありますが、その不可思議さをAIがあれば再現できる、ということにこそ価値があると思います。
※POD(Point Of Difference):競争優位性や自社独自の強み、POP(Point of Parity):業界標準、POF(Point of Failure):改善すべき点
弘中: とはいえ、属人的ノウハウは“秘伝のたれ”として閉じ込められがちです。なぜオープンにできるのでしょうか。
楠: それは会社の文化ですね。実は個人の属人化されたスキルやプロセスといった“秘伝のたれ”と言われる要素は、本人も言語化できていないことが多い。だからAIが自動で引き出す仕組みを用意した方がレバレッジが効きます。評価制度でも行動指針である「RAKUSL STYLE」を重視しています。
解像度(Reality): 自分だけの高解像度で捉える
仕組み化(System): 再現可能な仕組みに落とす
透明性(Transparency): オープンに共有する
チームファースト(Team First): 共同で成果を最大化
これらを体現すれば評価・報酬が上がる仕組みです。従って、ノウハウを開きやすい土壌があります。
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