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KDDIも「フィジカルAI」に注力 副社長が語るDX事業戦略の展望変革の旗手たち〜DXが描く未来像〜(1/2 ページ)

» 2025年11月05日 08時30分 公開
[杉山忠義ITmedia]

 KDDIのDX推進を基盤としたビジネスプラットフォーム「WAKONX」(ワコンクロス)が開始してから1年半が経過した。

 WAKONXでは、通信やクラウド、大規模計算基盤といったKDDIの強みを生かし、企業のDXをより迅速に支援することを目的としている。特に「ネットワーク」「データ」「バーティカル」という3つの機能群を軸に、モビリティ、リテール、物流、放送、スマートシティ、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といった6つの「協調領域」に最適化した課題解決を提供する。

 「和魂洋才」から生まれたWAKONXは、同社のビジネスをどのように変えてきたのか。

photo モビリティ、リテール、物流、放送、スマートシティ、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といった6つの「協調領域」に最適化した課題解決を提供する(KDDIのWebサイトより)

 KDDIは10月28〜29日の2日間にわたり、ビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2025」を開催した。これまで培ってきた通信ネットワークやIoTなどのアセットや技術を活用し、「誰もが思いを実現できる社会」を目指す「KDDI VISION 2030」の実現に向けた具体的な取り組みやユースケースを、講演や展示を通じて紹介した。

 29日に実施した桑原康明副社長のグループインタビューの内容から、WAKONXの展望を探る。

photo 桑原 康明 1993年に第二電電(現KDDI)へ入社。2018年から執行役員、2024年から代表取締役執行役員副社長となり現在に至る。

高輪ゲートウェイシティでの取り組みを地方都市に展開

――WAKONXが始まって1年半が経過しました。手応えを感じている領域や、今後の進展についてお聞かせください。

 まず大きな手応えを感じているのが、スマートシティ領域です。われわれはオフィスやビルはもちろん、街全体の企画・設計段階から災害やセキュリティ対策、今後の拡張を加味した上で、最適なネットワーク基盤や通信環境の構築を支援する「KDDI Smart Space Design」というサービスを提供しています。

 このサービスでは、実装した街から得た人流などのさまざまなデータを収集してデジタルツイン上に都市空間を再現し、デジタルの場でシミュレーションをする。そうして得た分析結果をリアルな街空間にフィードバックする。このような取り組みを、本社を構える高輪ゲートウェイシティでまさに実証、体感しながら進めているのですが、ノウハウがかなり蓄積されてきており、他の都市でも展開できる手応えを感じています。

photo 最適なネットワーク基盤や通信環境の構築を支援する「KDDI Smart Space Design」

――展開を予定している都市名や時期について教えてください。

 現状では具体的な都市名をお答えすることは難しいですが、高輪ゲートウェイシティで採用した仕組みをそのまま利用できることが重要です。地方のメジャー都市を想定し、実際に展開できると考えています。

 時期についてですが、現在は建設需要が高いこともあり、PoCなどスモールスタートで進めながら、本格的に進めるのは、あくまで現時点ですが2029年あたりを想定しています。

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今期末までにIoT回線数が7000万に達する見込み

 2つ目はモビリティ領域です。現在、パートナーも含めるとわれわれの通信サービスを活用しているIoT機器は、全世界で6000万回線ほどあります。そのうち約3500万回線が自動車です。この6000万という数字を、今期末までに全体で7000万弱に、自動車は4000万回線に増えると見込んでいます。

 コネクティッド事業のグローバル展開拡大を目的に、2024年4月に北米に設立したKDDI Spherienceという子会社の存在も大きいです。すでに、BMWグループさんへの通信サービスの提供を開始しています。自動車以外でもヤマハ発動機さんのボートにも同じく提供を始めていて、コネクティッドカーならぬ「コネクティッドボート」を実現しています。

 まだ企業名は出せませんが、農機具が有名な大手総合機械メーカーの建設機械などにもコネクティッドサービスを提供していく予定です。

――自動車をはじめとするさまざまな製品や機器がIoT化していくと。

 はい。そしてここからがまさにWAKONXの強みになりますが、われわれはWAKONXという一つのプラットフォームで全回線を結んでいますから、制御もWAKONX上でワンストップでできます。モビリティ領域であれば、モビリティコントロールセンターというものを設け、そこで全てのモビリティの運用監視を実施していきます。

 さらには先のスマートシティでの取り組みと重なりますが、さまざまなコネクティッドサービスで得たデータを蓄積・分析し、それぞれの製品のさらなる質向上や、新たなサービスの提供に寄与できるとも考えています。

AIが中古車の価格をデジタルボードに自動でプライシング

――その他はいかがでしょう。

 リテール領域では、AIと通信技術を活用し商品の価格を自動で変更・表示する「KDDI AIデジタルプライスボード」の引き合いが多いです。いわゆる電子棚札ですが、人が価格を打ち込むのではなく、AIがマーケットの動向を加味した上で、自動で、もしくはどのあたりの価格で表示するのかをレコメンドする機能も備えています。

 自動車業界、特に中古車販売店ではこれまで人が同業務を行っていたため、かなりのコストを要していました。その改善になると、すでにトヨタ自動車さん系列のディーラーで採用されており、今後はスーパーマーケットなど、他のリテール領域にも展開できると考えています。

photo AIが中古車の価格をデジタルボードに自動でプライシング

スマートシティを中心に58社が参画

――実際、どれくらいの数の企業から引き合いがあるのでしょう。

 現在はスマートシティ領域での引き合いが大きく、設計やデザイン、施工などそれぞれの分野で専門業者の方々が参画してくれています。デジタルテクノロジー分野での参加も増えてきており、現在、合計で58社のパートナー企業と共創を進めており、さらに拡大していく予定です。

 「ConnectIN」というサービスに参画してくださる企業も増えています。これまではPCやモバイル端末を購入し、使用し始める際にはネットワーク環境を新たな通信契約なども含め、設定する必要がありましたよね。ConnectINを使えば最初に多少の設定は必要ですが、通信のことを気にすることなく、機器を使うことができます。

――通信費やデータ容量を気にしなくてよい、ということですか?

 その通りです。月額料金も発生しません。購入いただいた時点でConnectINが入っていれば、期間の縛りはありますが、お客さまは通信のことを気にすることなく、機器を使うことができます。

 現在はPCでの展開となっており、PCメーカー各社が参画していますが、今後はカメラやドライブレコーダー、ATMなどの機器にも展開していこうと考えています。

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