相場の格言に「事故は買い、事件は売り」というものがある。
不正会計や法令違反といった「事件」は、企業の組織風土という根幹の問題であり、「売り」が定石とされてきた。
しかし、この古い格言は、現代の市場において必ずしも定石とはいえなくなってきている。
例えば、2011年に発覚したオリンパスの粉飾決算事件だ。過去の巨額損失を隠蔽(いんぺい)するための長年にわたる組織的な粉飾は、日本企業のガバナンス不全を象徴する大事件だった。発覚後、株価は80%以上暴落し、上場廃止の瀬戸際に立たされた。
だが、同社は経営陣を刷新し、ソニーからの資本注入を受け入れ、強みである医療(内視鏡)事業への集中という事業再生を断行した。市場がこの「膿を出し切る」姿勢と、中核事業の圧倒的な競争力を再評価すると、株価は数年かけて事件前の水準を遥かに超え、不正発覚時の10倍近くまで株価は上昇した。
フジ・メディア・ホールディングス(HD)のケースも記憶に新しい。2025年1月、タレントの中居正広氏の引退にまつわる同社の不祥事が伝わると株価が一時急落した。しかし、市場の関心は同社のPBR(株価純資産倍率)が0.4倍台という極端な割安状態で放置されていた点に集中した。
これは、同社が保有する豊富な不動産や有価証券といった資産価値が、本業の放送事業の停滞懸念から株価に全く反映されていないことを示していた。この状況に対し、アクティビスト(物言う株主)が経営改善や株主還元を要求。さらに、割安さの是正期待から買いが集まる展開となった。不祥事発覚がきっかけで、同社の株価は2倍になったのだ。
これらの事例が示すのは、もはや市場は「事件」の重大性だけを見ているわけではないということだ。起きた問題の是正可能性と、事業の中核的価値の毀損度合いを、ある種冷徹にてんびんにかけるような価値観へ変化しているというわけだ。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
仕事が遅い部下に“あるテクニック”を教えたら、「チーム全体の残業時間」が3割減ったワケ
新入社員「Web会議でカメラオンにする必要なくないですか?」 上司のあなたはどう答える?
宮古島“観光バブル”の代償──倍増した家賃、住めなくなる地元民……変わりゆく現実Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング