バーガーキングの日本事業が躍進している。2019年に77店舗にまで落ち込んでいた店舗数は337店舗(2025年末時点)と4倍超に拡大。既存店売上高は44カ月連続で前年実績を上回る。
成長の核心にあるのは「安売りしない」という価格に対する考え方と、ブランドの顔として打ち出す「直火焼き」という味の強みだ。また、バーガーキングは時に賛否を呼ぶ大胆な広告施策によってSNS上の話題を獲得しながら、ブランドイメージの浸透を図ってきた。
帝国データバンクによれば、2025年度のハンバーガー店の市場規模は約1兆300億円。中でもマクドナルドが圧倒的シェアを握っている。
後発のバーガーキングはいかにして独自のポジションを築いてきたのか。バーガーキングの日本事業を運営するビーケージャパンホールディングス(東京都千代田区)の野村一裕社長に聞いた。
野村一裕 ビーケージャパンホールディングス社長。1978年生まれ。上智大学卒業、MBA、一橋大学大学院国際企業戦略専攻。2002年キリンビール入社。料飲店・量販店の営業担当や商品マーケティング担当を歴任。2019年ビーケージャパンホールディングスに入社。同年新体制となったバーガーキングのマーケティングディレクターとしてマーケティング戦略、新商品開発、ブランドコミュニケーションを指揮。2022年にCOO就任。マーケティング部門に加え、店舗開発やフランチャイズビジネス部門を統括。2023年1月より代表取締役社長に就任(撮影:河嶌太郎)――マクドナルドなどに慣れ親しんだ日本人にとって、バーガーキングの「アメリカンな味」が受けている理由はどこにあると分析していますか。
やはり「直火焼き」という製法が、最大の差別化ポイントです。
鉄板で焼いて脂を吸い込んでしまう製法とは異なり、直火でパティを焼くことで余計な脂を落とし、スモーキーな香りをつけられます。バーベキューで焼いたステーキと、家のフライパンで焼いたお肉の味が違うのと同じ理屈ですね。これがわれわれのUSP(Unique Selling Proposition、商品やサービスが持っている独自の強み)です。
――バーガーキングでは毎月のように新商品を出しています。期間限定商品の戦略について教えてください。
期間限定の目玉商品は、基本的に年4回、それぞれ約12週間というスパンで展開しています。
例えば「マッシュルームワッパー」は非常に好評で、1店舗当たり1日平均100個ほど売れました。これは競合他社の主力商品と比べても、単一品目としてはかなりの販売数だと思います。他にも、カットステーキを載せた商品などもメガヒットしました。
戦略としては、そうしたメガヒット商品を12週間販売しつつ、その期間の合間に別のターゲットに向けた新商品を差し込んでいく形をとっています。例えばマッシュルームが売れている期間に、毛色の違う限定商品を投入することで、普段ワッパーを食べている層が「おっ、何か違うものが出たな」と興味を持ってくれます。利用者を常に飽きさせない工夫を凝らしています。
――特に売れ筋の期間限定商品は何でしょうか。
マッシュルーム、アボカド、ステーキ、そしてガーリックですね。商品名も「にんにく・ガーリックバーガー」と、ニンニク尽くしのネーミングにしています。デザインも強烈で、キャッチコピーは「明日休みですか?」です。
要は「人に会わない方がいいですよ」というメッセージなのですが、やはり皆さん潜在的にそういうパンチのある味を求めていらっしゃるんですよね。
――「にんにくバーガー」のようなパンチのある商品は、一方で野菜不足や健康面を気にする層もいそうです。ブランドとして、一食の「満足度」と「バランス」をどう両立させていますか?
そうですね。にんにくバーガーはソースの味をダイレクトに楽しむ商品設計なので、あえて野菜を入れていません。ただ、そこに一食としての「バランス」を求めるなら、面白い方法があります。
私は、サイドメニューのシーザーサラダをパカッと開けて、そのままバーガーに挟んで食べるんです。濃厚な肉とソースにシャキシャキの野菜が加わることで、より満足感が増します。こうするとフレンチフライなどの揚げ物を追加する必要がなくなり、アイスコーヒーがあれば十分お腹も心も満たされます。
こうした「自分好みの組み合わせ」で満足度を最大化できる点も、われわれのような強い商品を持つブランドの強みです。既存のメニューをどう組み合わせて「理想の一食」を作るかという提案は、今後のマーケティングのヒントにもなると考えています。
――一見脂っこくて敬遠されそうなイメージもあるバーガーキングですが、40代、50代からも支持を集めているようですね。
もともとバーガーキングのコア層は、45〜55歳の男性と言われていました。海外出張などで現地のバーガーキングを知っている方が多かったんです。しかし最近では、10代、20代の女性の利用者が非常に増えています。新宿や渋谷の店舗を見ていただければ分かりますが、本当に若い方ばかりです。「バーガーキングは高い」というイメージが払拭されてきているのだと思います。
これには他社の値上げの影響もあるでしょうが、われわれは「オールデイ・キング」という、いわゆるEDLP(Everyday Low Price)戦略をとっています。550円、600円、650円というセット価格を展開しているのですが、この「松竹梅」の中で一番売れるのは、実は一番高い650円の「松」なんです。構成比で言うと50%以上を占めています。
この結果を受けて、3月には新しく700円のセットを導入して検証しています。もし700円のセットが売り上げの25%ほどを占めるようになれば、550円や600円という低価格帯は必要ないかもしれないという判断ができるからです。
以上がインタビュー内容だ。店舗数を6年で4倍超にまで急拡大させたバーガーキング。その躍進の裏には、徹底した「直火焼き」へのこだわりと、顧客の欲求を理解した商品開発、そして安売りに頼らない価格戦略があった。
バーガーキングは「3つの強み」を武器に、マクドナルドの牙城を崩せるか。
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