リテール大革命

広告費ほぼ0円、なのに月10万DL 訪日客がこぞって利用する「Payke」はどんなサービスなのか?(4/5 ページ)

» 2026年04月30日 07時30分 公開
[長嶺真輝ITmedia]

なぜ、バーコートに目を付けた?

 どうすればモノに価値を乗せて届けられるのか――。目を付けたのが、貿易事業で馴染(なじ)みのあったバーコードだった。古田氏は「バーコードは世界中の人が知っていて、使い方も分かる。少なくとも先進国と言われる国には統一規格があります。これに情報をひも付ければ、商品の魅力をボーダレスに伝えられると考えました」と説明する。

 Paykeを創業した2014年には、iPhoneを中心にスマートフォンが世界で爆発的に普及し、搭載カメラでバーコードやQRコードを読み取る行為も一般的になりつつあった。こうした環境や外国人に利用方法を説明しやすい点が、バーコードを軸としたサービス設計を後押しした。

アプリ内でカメラを起動し、バーコードを読み取るだけで商品情報が表示される(画像:筆者撮影)

 Paykeの利用設計のイメージが固まった段階で大学を休学し、本格的に事業展開に乗り出した。とはいえ、知名度のない地方発のスタートアップであることに変わりはない。商品データとユーザーをゼロから積み上げる必要があった。

 まず那覇空港に並べられた土産品を調べ、メーカーをリスト化した。約200社が大半の商品を作り、そのうちの95%が県内メーカーであることを把握。メーカー1社ずつを訪問して事業を説明すると、約9割の企業が協力に応じたという。

 その際、各社の商品に対する愛着を知ることができた。「例えば『他社はマーガリンを使っているけど、うちはバターを使っているんだよ』など、作り手のこだわりや思いをたくさん聞き、それが消費者に伝わっていないのはもったいないと感じました」と振り返る。メーカーにとっても意義深い事業であることをあらためて確信した。

 ユーザー獲得も地道だった。沖縄や台湾の空港でチラシを配り、動画で使い方を説明した。転機は、台湾でチラシを渡した、地元テレビ局のキャスターとの出会いだった。ニュースで紹介された動画をFacebookに投稿すると、シェアが数万回に達してダウンロード数が急増。累計で100万、200万とみるみる増えていった。

 その後、訪日客が途絶えたコロナ禍では「取引先も売り上げもリセット」という厳しい状況に直面する。それでもインバウンドが回復した2024年は、年間ダウンロード数が100万、2025年は130万に到達。商品情報データの登録を自動化したことで、対応商品のカバー範囲が加速度的に拡大し、使い勝手が向上したことも成長を後押しした。

 コロナ禍でキャッシュフローが悪化し、現状の広告費はほぼ0円という。だが、その利便性の高さに加え、「バーコードを読み取る」という直感的な操作設計がSNSの縦型動画と高い親和性を持ち、現在も多くの拡散を生んでいる。

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