ホロアースは、カバーが2025年4月に正式リリースしたメタバースサービスだった。ホロライブのキャラクターやファンが集うバーチャル空間で、ライブも、ゲームも、コミュニケーションも、全てを束ねる、同社の「次の収益柱」になるはずだった。
決算説明会で谷郷社長は、終了の理由として色々な要素を盛り込みすぎたという反省を語った。タレントにとって本業の配信プラットフォームと、新規メタバースが社内で食い合う構造になっていた、という率直な総括である。
メタバース事業そのものが死んだ、という話ではない。Robloxやフォートナイトといったユーザーが投稿するタイプの仮想空間ゲームは世代を超えたプラットフォームになりつつある。問題は今のカバーには配信アプリとメタバースの両方を並走させる体力がなかったということだ。
では、Vtuber事務所の成長余地はもはや乏しいのか。決算の細部を見る限りまだ可能性は残されている。
カバーの決算を部門別に確認すると、ライブ・イベント収益が前年比18.7%増、ライセンス・タイアップが同25.3%増、マーチャンダイジングが同15.6%増だった。
インターネット上の活動よりも、人や実物商品が動く「実業」が伸びていることが分かる。なかでも目を引くのが、トレーディングカードゲーム「ホロライブ・オフィシャル・カードゲーム」だ。2026年3月期で売り上げは約72億円、累計2000万パック超を販売したという。新規参入したTCG(トレーディングカードゲーム)として、市場に存在感を示しつつある。
ライバルのANYCOLORも同様に、ライブとコマースが成長をけん引している。2026年4月期通期予想は売上高520億円から540億円、純利益145億〜152億円と上方修正を続けている。
両社が描く成長の青写真は、もはや「VTuberの配信会社」ではなく「IPを軸にした総合エンタメ企業」に近い。
警戒すべきシグナルもある。カバーの事業の柱の1つ「配信・コンテンツ売上」が、前年比2.0%の微減に終わった。その要因は、人気タレントの卒業に伴う活動量の減少と、海外向け関税環境の悪化によるEC売上の伸び悩みだ。
IPの担い手は生身のタレントである以上、卒業・契約満了は避けられない。「個別タレントへの依存」をどう薄めるかは、TCGやライセンス事業の拡大と並ぶ、もう一つの構造的課題である。
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