5月8日〜10日、韓流イベント「KCON JAPAN 2026」の会場である幕張メッセは、数万人の若者が放つ熱気に包まれていた。韓国の「K」と「Convention」(展示会)、「Concert」(コンサート)を組み合わせた「KCON」は、K-POP、ビューティー、ファッション、フードを網羅した「韓国ライフスタイルの集大成」ともいえる巨大イベントだ。
KCONはK-POP、ビューティー、ファッション、フードを網羅した「韓国ライフスタイルの集大成」ともいえる巨大イベントだ(「KCON JAPAN 2026」ⓒ CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved)2015年の日本初開催から約10年で、来場者数は実に約10倍に膨れ上がっている。この爆発的な成長の裏には、どのような集客や顧客体験の設計図があるのか。主催する韓国CJ ENMのコンベンション事業部長 パク・チャンウク氏に、その戦略を聞いた。
CJグループはK-Beauty(韓国の美容)をけん引する企業であるOLIVE YOUNG(オリーブヤング)、食品のCJ第一精糖、音楽・映画・ドラマなどのエンタメ企業CJ ENMなどが構成する、世界有数の文化事業大手だ。パク事業部長は、KCONが同グループにとって「オフラインプラットフォーム」という極めて重要な役割を担っていると説明する。
「KCONは、単一のイベントではありません。CJグループは、生活文化全般を扱う企業です。グループの資源をバラバラに提供するのではなく、有機的に統合することで、カテゴリーを超えたシナジーとデータを創出する場にしています」
KCONは2012年の米カリフォルニア州での初開催以来、フランス、オーストラリア、メキシコ、UAE、タイ、サウジアラビアなど14の地域で開催してきた。もはや単なる音楽ライブとは言えない規模にまで成長している。
日本で初開催した2015年の来場者数は1万5000人だったが、2026年には12万人にまで成長した。この背景には、K-POPという強力なフックを用いながら、韓国のライフスタイル全般を輸出してきたCJグループの緻密な設計がある。
今年は、33組のK-POPアーティストなどの演者によるパフォーマンスの他、韓国のSamsung GalaxyやOLIVE YOUNG、韓国農水産食品流通公社、さらに米Visa、日本のKDDIなど16社が協賛。出展したブースはコスメ、フードなど計300にのぼった。来場者は「韓国の若者文化を総合的に体験できる」と言っても過言ではない。
実際に会場では、韓国料理のフードコート会場が大勢の来場者でにぎわっていた。テーブルに座れない来場者も続出していたほどの盛り上がりようだ。調査会社インテージが発表した「全国小売店パネル調査」によると、2023年の韓国関連食品商材の市場規模は、2018年比で150%増の290億円規模だったという。同社は「市場は中長期的に拡大している」としており、それを証明するような光景だった。
KCONの客層で最も多いのは18〜24歳で、30代から40代までを含めると全体の80%を占めている。そのうち女性の割合は80%に達するという。
多くの日本企業が「若年層との接点」を生み出すのに苦戦する中、KCONは18〜24歳を中心とした「流行の最先端層」を12万人も集客する。自社でこの規模をターゲティングして集客するコストと時間を考えれば、KCONへの出展は、効率的なマーケティング手法と言えそうだ。
パク事業部長も「この層をターゲットとする企業にとって、とても良い販促の機会になります。効率的にアプローチできるからです」と話す。
さらに「CJ ENMが重視しているのは顧客体験(CX)」だという。CMや各種広告を見るだけでは動かない世代に対し、実際に食べ(Food)、試用し(Beauty)、スマホの実機を触ってもらう「五感の販促」を仕掛けている。いろいろな体験を提供することで、来場者を「ファン」に昇華させようとしているのだ。
そして日本市場を重視するのには、大きな理由がある。
「他の市場と比べて日本市場は、韓国のライフスタイルに対し好感度が高い傾向があります。日本の特徴は、ファンのロイヤルティ(忠誠心)が高く、一度ファンになったら、ずっとファンでい続けてくれることが多いのです。KCONにとっての日本市場は非常に重要で『日本の方は何が好きなのか?』『どうしたら関心を持ってもらえるのか?』を常に研究してきました」
出展企業にとって、もう1つの魅力は、顧客データを取得できることだ。例えば、来場者に特典を渡す代わりに、企業が用意したQRコードをスキャンしてSNSに投稿してもらったり、特典のフィードバックをしてもらったりしている。これにより、出展企業は良質な顧客データを取得できるのだ。パク事業部長は、出展企業にメリットを提供できていることを強調した。
「出展企業が取得するデータですので、当社には提供してもらっていません。出展企業は、ブースでの各種体験などを通じて顧客情報の他、直接フィードバックを得られるメリットがあります。これは間違いないでしょう」
パク事業部長は「出展企業側は、それぞれ異なるアプローチで顧客分析をしていると考えています」と話す。
「さまざまなブースで、サンプリング、展示、試食、商品販売、SNSイベントなど、多岐にわたる参加型イベントを企画し、グローバルに向けてブランドを発信しています」
その結果、出展企業からは「日本で一般客にプロモーションができ、その場で反応を見られる良い機会」というフィードバックがあったという。CJ ENMも、調査やオンラインモニタリングを通じて、顧客のフィードバックをリサーチし、それを毎年のイベントに反映しているという。
加えて東京都心では、ビジネス商談会「K-COLLECTION with KCON JAPAN 2026」も開催した。化粧品、食品、生活用品、ファッション雑貨を扱う韓国企業50社が出展。韓国製品の対日輸出をしたい韓国企業と、韓国の商品を販売したい日本企業をマッチングする「B2Bの商流」も同時に構築している。
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