こうした人気を背景に、江ノ電の経営は好調だ。国土交通省『鉄道統計年報』(2024年度版)によると、鉄道部門の営業収益は約33億3200万円、営業損益は約6億3580万円の黒字で、中小私鉄としては比較的安定した経営を維持している。
もっとも、1960年代には自動車社会の進展で利用客が減少し、廃止論まで浮上していた。当時の社名は「江ノ島鎌倉観光」。黒澤明監督の映画『天国と地獄』には、江ノ電が1両編成で走る場面も登場し、当時の利用状況をうかがわせる。しかし現在は4両編成での運転が基本となり、1990年には累積赤字も解消した。
こうなると、混雑解消や利益拡大のために、列車の増発といった輸送力の増強に取り組みたいところであろう。しかし、江ノ電の輸送力はすでに限界に近い。これ以上の増発や車両の増結を、したくてもできない状況にあるのだ。
最大の理由は、全線が単線であることだ。上下線の電車は、途中駅や信号場(列車交換専用の設備)ですれ違う必要がある。藤沢発の列車は、鵠沼、江ノ島、峰ヶ原信号場、稲村ヶ崎、長谷と、すれ違い可能な場所を順番に全て使いながら鎌倉へ向かう。つまり、列車を増やそうにも、新たにすれ違える場所がないため、これ以上ダイヤを入れられないのである。
こうした制約はダイヤにも表れている。江ノ電は、列車交換設備の位置に合わせて運行ダイヤを組んでいるため、平日・土休日とも、ほぼ終日14分間隔の運転となっている。朝夕ラッシュ時や観光客で混雑する昼間だけ本数を増やすことはできない。
加えて、路線の多くは市街地や海岸沿いの狭い用地を走っており、複線化の余地もほとんどない。駅ホームも限界まで延伸されているが、4両編成がぎりぎり停車できる程度だ。腰越駅では両側を踏切に挟まれているため、ホーム長が3両分しかなく、鎌倉側の1両はドアを開けずに対応している。
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