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富士通が認めた「人月モデル」の限界 時田社長「労働集約型SIモデルからの転換を」

» 2026年06月01日 07時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 富士通は5月28日、2035年度を目標とする「中長期経営ビジョン2035」を発表した。2035年のAIサービス市場で合計30兆円規模になると予測する3領域「国産計算基盤」「フィジカルAI」「データ活用」で、売り上げ3兆円規模のビジネス獲得を狙う。

 同日の説明会に立った富士通の時田隆仁社長CEOは「企業の競争優位性は『経営資源の規模』ではなく『最新のAI技術をいかに経営に取り込めるか』で差が生じる」と強調。米OpenAIや米AnthropicなどAI企業との協業に加え、研究開発や人材育成などに10年間で3兆円を投資すると明かした。

photo 中長期経営ビジョン2035の説明会に登壇した富士通の時田隆仁社長(編集部撮影)

 中長期経営ビジョンで収益の柱に位置付けるのが、冒頭の「3領域で3兆円規模の新規事業」と、従来の主力事業である「サービスソリューション事業」の拡大だ。後者の核となる社会課題解決型の事業モデル「Uvance」(ユーバンス)は2025〜2030年度で年平均成長率20%超を、ITシステムのモダナイゼーション(刷新)事業は年平均成長率10%超を目指す。

 中長期経営ビジョンには華々しい数字が並ぶが、その実現に向けて時田社長は「テクノロジー企業としての富士通には弱点」があり「早く転換すべき」だと語った。同社が抱える課題とは。

photo 2035年度までの経営ビジョン(出所:富士通の中長期経営ビジョン2035説明資料)

富士通が認めた「人月モデル」の限界 「労働集約型SIモデルからの転換を」

 これまで富士通を支えてきたサービスソリューション事業における売上収益の内訳は、2025年度時点で「従来型ITサービスが60%」「Uvanceが30%」「モダナイゼーションが10%」だった。同社は2035年度までに、Uvanceの比率を70%以上に引き上げる目標を掲げる。

 Uvanceは、同社が培ったナレッジを基に、顧客の課題解決につながる製品やサービスをパッケージ化した「オファリングサービス」が軸となる。ここに業種特化型AIエージェントを組み込んで「顧客の事業変革の加速」「富士通社内の生産性向上」などを狙う。

 「全てのサービスでAIを取り込んで、労働集約的なシステムインテグレーションのビジネスモデルから、価値成果ベースのビジネスモデルへの転換を加速させる」(時田社長)

photo サービスソリューション事業の事業拡大ビジョン(出所:富士通の中長期経営ビジョン2035説明資料)

 サービスソリューション事業拡大の要件として、時田社長が「早く転換すべき」とするのが「プライシングモデルの変革」だ。Uvance収益の60〜70%が「人月(にんげつ)単価ベースの価格設計」に依存している。これはシステム開発などの工数を「作業人数×月(時間)」で表した単位で、費用の見積もりに用いられる。

 「人月ベースで対価をもらう方法では、これ以上の成長は見込めないという強い危機感を持っている。(中略)人月モデルは人数と月数で工数を算出するが、今の企業経営にとって最も重要なのはスピードであり、月数は短いに越したことはない」(時田社長)

AI活用で「人の数を必要とするプロジェクトは減る」

 AI活用によってシステムインテグレーションの現場が変わっていることも、人月モデルの継続を難しくしている。

 「人の数を必要とするプロジェクトはどんどん減っていく。秀でた人材がAIを使いこなせば、1人で100人分の仕事ができるかもしれない。そのような世界観で、プライシングモデルの変革にチャレンジする」(時田社長)

 同社は、人月モデルから「価値提供モデル」への転換を図ろうとしている。富士通が提供する製品やインフラ基盤、テクノロジーなどを活用する企業に対して「データ量への課金」「計算量への課金」を検討していると時田社長は語る。

 「テクノロジー企業としての当社の弱点は、使ってもらわなければ価値を創出できないということだ。顧客が当社のテクノロジーを使うことで大きな収益・成長機会を得られるなら、その対価がどれほどのものか顧客の方がよく分かるはずだ」(時田社長)

 変化が激しいAI時代において、10年という長期の経営ビジョンを打ち出した富士通。AIなどの最新テクノロジーを取り入れるだけでなく、時代に即したビジネスモデルへの転換を実現できるか。

photo 中長期経営ビジョン2035の説明会が開かれた富士通本社ビル(編集部撮影)

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