魚肉ソーセージは、なぜ「あの形」のままなのか 縮小市場で見えてきた、ロングセラー商品の戦い方(1/4 ページ)

» 2026年07月17日 07時30分 公開
[田窪綾ITmedia]

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 1972年ごろには業界全体で約18万トンあった魚肉ソーセージの生産量は、食の選択肢が増える中で長く縮小傾向が続き、2010年代には約5万トン台まで落ち込んだ。しかし近年は、健康志向や備蓄ニーズの高まりなどを背景に、生産量は再び持ち直しつつある(参照:Umios「フィッシュソーセージ/魚肉ソーセージの歴史」)。

 市場が縮小すると、新たな顧客を求めて若年層向けの商品開発にかじを切る企業は少なくない。しかし、水産加工大手のUmios(旧:マルハニチロ)が最初に見直したのは、魚肉ソーセージをよく知る50〜70代の既存顧客だった。

 健康という新たな価値を加えながらも、味や形といった記憶は残す。そして、若年層には商品を変えるのではなく、「魚肉ソーセージを食べるきっかけ」を増やす――。世代ごとに異なるアプローチでブランドを育ててきた。

 ロングセラー商品は何を変え、何を変えないのか。縮小市場を生き抜く取り組みについて、担当者の上山光洋氏(加工食品ユニット チルド食品事業部 事業企画課 課長役)に話を聞いた。

Umiosの魚肉ソーセージ(画像:筆者撮影)

魚肉ソーセージはなぜ復調したのか

 魚肉ソーセージ市場が復調した背景には、コロナ禍や物価高を経て、商品の特徴が現在の消費者ニーズと重なったことがある。

 その一つが、常温で保存できる利便性だ。魚肉ソーセージはタチウオ、スケソウダラといった白身魚の冷凍すり身から作られる。中身を詰めてから、密封した包装フィルムごと高温高圧で加熱殺菌するため、保存料を使わずとも常温で長期間保存できる。

 上山氏は「コロナ禍以降の内食需要や備蓄ニーズ、健康志向の高まり、物価高の影響などを背景に、魚肉ソーセージの価値が改めて見直されつつあると感じています」と話す。朝食や弁当、子どものおやつ、酒のつまみなど用途は広いことに加え、魚由来のたんぱく質を手軽に取れる点や、災害時の備蓄として活用できる点も評価されている。

 さらに、畜肉ソーセージ(豚肉や牛肉を使用するソーセージ)と比較した際の割安感も追い風となった。KSP-POSデータ(2025年10月1日時点)によると、畜肉ソーセージの平均価格は320円なのに対し、魚肉ソーセージは207円と約110円安く、節約の観点から食事の選択肢に上がるようになった。

 レシピプラットフォーム「クラシル」が発表した「2025年の食トレンド分析」では、「魚肉ソーセージ」の検索伸長率が1.4倍になっており、消費者の関心の高まりがうかがえる。

 ロングセラーであるがゆえに、魚肉ソーセージはかつての「安くて懐かしい食品」というイメージが強かった。しかし現在は、健康や節約、備蓄、時短といった複数の文脈で改めて評価され始めている。

Umiosの魚肉ソーセージの豊富なラインアップ(画像:筆者撮影)

 もっとも、こうした再評価は自然発生したわけではない。市場環境の変化だけでなく、メーカー側も商品の価値を伝える取り組みを続けてきた。その一社であるUmiosは、主要顧客層を捉え直し、「健康」という切り口で消費者のニーズを獲得していった。

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