日立製作所は6月5日、米Anthropicが開発した先進AIモデル「Claude Mythos Preview」(以下、Claude Mythos)のアクセス権を得たと発表した。同権限は、AI起因のサイバー脅威に対抗する世界的な“セキュリティ防衛連合”「Project Glasswing」への参画によって得たものだ。
Claude Mythosは、高度なプログラミング能力を持つAIモデルだ。4月時点で多数のソフトウェアに潜む数千件の脆弱(ぜいじゃく)性を発見したといい、Anthropicはサイバー攻撃能力が高過ぎるとして「一般公開する予定はない」と明言。一部の組織に限定して提供している。
同AIモデルについては、日本政府が対応を議論するなど警戒を強めている。Anthropicは6月2日、Claude Mythosのアクセス権を150組織に拡大すると表明。日本政府や国内金融機関も含まれるとされ、どの企業が対象なのか関心が高まっていた。
日立製作所、NEC、富士通の3社がAnthropicとの戦略的協業を開始していただけに、今回の発表は大きな注目を集めた。
「Claude Mythosは、ソフトウェアの脆弱性を見つけて悪用する能力において、最も熟練した人間を除き、全ての人間を上回るレベルに達している」――Anthropicは、同社Webサイトでこう説明している。
同AIモデルが発見した脆弱性は、不正アクセスなどを防ぐサイバー防御壁「ファイアウォール」の基本ソフトに27年前から存在するものや、世界中のサーバの半数以上に使われている基本ソフト「Linux」の中核に存在したものもあるという。
こうしたAIの脅威に備えるために、Anthropicが立ち上げたのが「Project Glasswing」だ。同社は「(AIの高度な機能を)防御目的で活用するための緊急の取り組み」と説明する。米Google、米Apple、米Microsoft、米NVIDIAなど大手テック企業をはじめ約200社が参加する防衛連合の様相を呈しており、Claude Mythos級のAIを想定したセキュリティ対策に挑んでいる。
このProject Glasswingへの参画に名乗りを上げたのが、日立製作所だ。
日立製作所は5月19日、Anthropicとの戦略的な協業を発表していた。当時のプレスリリースで「(日立製作所が培った知見と)Anthropicの先進的なAIを融合することで、電力・交通・製造・金融といった社会インフラの円滑かつ安全な運用に向けた、システム開発・運用の高度化やセキュリティ強化を強力に推進する」としていた。
6月5日のProject Glasswing参画発表時には「エネルギー分野をはじめとする社会インフラ向けに日立が提供するソフトウェア・プロダクト自体のサイバーセキュリティ強化に(Claude Mythosを)活用する」と説明した。
同社のサイバーセキュリティ専門部隊「Cyber CoE」がClaude Mythosを活用し、社会インフラ向けソフトウェアの脆弱性発見と修正に取り組むという。
Claude Mythosを巡っては、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行がアクセス権を得ると、日本経済新聞が5月13日に報じていた。6月4日には、トレンドマイクロがProject Glasswing参画とClaude Mythosの利用を公表している。
4〜6月にはNEC、日立製作所、富士通、SBIホールディングスがAnthropicとの協業を相次いで発表した(関連記事)。
NECは、4月23日に戦略的協業を結んだと発表。翌日の記者発表会に立った同社の吉崎敏文氏(副社長兼COO)は「Claude Mythosについては回答を差し控える。Anthropicの新しいテクノロジーを使うことは戦略的協業に入っている。そのフォーカスにセキュリティも含まれている」と回答した。
参考記事:発表の2日前に決まった――NECとAnthropicが“電撃的協業” 3週間のスピード協議の舞台裏
富士通は、5月27日に戦略的提携を発表した。プレスリリースで「Anthropicの最新のAIモデルに早期にアクセスして(中略)顧客に高度で実践的なAI活用を提供する」と説明したが、詳細は明かしていない。
同社が5月28日に開催した中長期経営ビジョン説明会では、富士通の時田隆仁社長CEOが「(将来的に)Claude Mythosのような、天地が入れ替わるほどの技術が出てくることもあり得る」「使う側がどう思おうが、使わざるを得ない状況に来ている。それをClaude Mythosが証明した」とコメントしていた。
SBIホールディングスは、6月2日にAnthropicの最新セキュリティ技術「Claude Security」の導入に向けて共同検証を始めると発表した。さらに「Anthropicから最新モデル・機能を搭載した生成AIへの優先的なアクセス、業界動向および防御技術に関する最新の知見の共有を受ける」としている。
Claude Mythosをはじめ、高度に進化する生成AIを悪用したサイバー攻撃の懸念が高まる中、早期なセキュリティ対策が求められている。Claude Mythosのアクセス権拡大によって、対策を加速させられるか。
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