バーガーキングが成功したのは、出発点が「壊れた事業」だったからだ。縮みきった店舗網には、立て直す余地――すなわち伸びしろがあった。
スターバックス日本は真逆である。すでに国内カフェの頂点に立ち、出店も価格も体験価値も磨き上げられた成熟資産だ。「育てて伸ばす」型の上昇余地は乏しい。
すると、新しいオーナーが残された利益を引き上げるレバーは、事実上2つしかないと筆者は考える。
それは、さらなる値上げか、コスト圧縮だ。しかしこれらの選択肢は、スターバックスの競争力を自ら削る行為に他ならない。
日本のスタバが度重なる値上げに耐えてこられたのは、体験価値を優先するブランド戦略で客離れを抑え込んできたからだ。コスト圧縮によって体験価値が痩せ、値上げが顧客満足度を削るなら、その均衡は崩れる。
皮肉なのは、本国がまさに「効率を追って体験を希薄化させた末の客離れ」を起こしていることだ。本国が反省して原点回帰を目指す間に、日本が米国の失敗をなぞってしまわないか。
もっとも、悲観すべきことだけでもない。
買い手が日本法人の独立性を尊重すれば、現地に最適化した経営判断はむしろ速くなり得る。
これを機に再びIPOすることを選べば、成功を築いた現経営陣のもとで日本のスタバが自走する道も開ける。ブランド、店舗、アプリといった消費者接点は、資本の出し手が代わっても維持されるのが通例だ。買い手が誰であろうと、日本のスタバが明日、別の名前になるわけではない。
問われるのは、その先だ。本当の論点は、売却額の大きさではない。新しいオーナーが短期の投資利益とブランドの長期価値のどちらを優先するかに尽きる。
日本のスタバの勝ち筋を作ったのは、利益を急がない忍耐だった。その忍耐を引き継ぐ買い手が見つかるかどうかに、日本のスタバの命運はかかっているのではないだろうか。
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
「あの時気付いていれば……」 モンスター社員を面接で見抜く、たった一つの重要質問
ニトリHDの時価総額半減……「36期成長神話」が崩壊した、これだけの理由
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング