「自信があるから、今日この数字を言った」──。ソフトバンクグループが6月24日に開催した株主総会で、会長兼社長の孫正義氏が、将来的な目標として保有株式の時価評価額から純有利子負債を差し引いた純資産価値(NAV)を1000兆円とする展望を語った(関連記事「今日言うつもりはなかったが……」 孫正義氏が明かした「ロボット自動量産工場」の実態)。この構想を裏付けるのが、国家やインフラの枠組みを巻き込んだ世界規模の戦略投資だ。
総会の質疑応答では、経営難が報じられていた米Intelにあえて3000億円を投じて巨額の含み益を出した「国家安全保障」の視点や、米国での巨大データセンター計画の進捗など、投資戦略の舞台裏が次々と明かされた。
さらに、AIインフラの最大のボトルネックである「電力確保」を巡り、子会社のソフトバンクが東京電力の次期オーナー候補に名乗りを上げている事実に言及。最先端データセンターを日本へ呼び戻そうとするインフラ戦略に迫る。
――経営危機や業績難が報じられたIntelに、あえて3000億円もの資金を投じた狙いはどこにあったのですか?
出資した直後は「なぜIntelなんかに行くんだ」「目がくらんだのか」と、業界の専門家からも非難の嵐でした。しかし、この半年でわれわれが投じた3000億円の価値はすでに5〜6倍に大きくなりました。時価総額ベースで兆円単位の含み益が出ています。
なぜそこに張ったのか。結論から言えば、これは国家安全保障の観点から不可欠な投資だからです。現在、世界の最先端半導体の製造(ファウンドリ)は、台湾のTSMCが圧倒的なシェアを握っています。2位がIntel、3位が韓国のサムスン電子です。米国のIntelが2位ですが、ものすごく差が開いているんですね。
しかし地政学リスクを考えたとき、米国政府としては(アメリカ国内に製造工場を持つ)Intelを(国策で)強化せざるを得ないのです。
すでに米NVIDIAや米Appleといった世界のトップ企業がIntelとの製造契約を交わしたとか交わす予定だとか、さまざまなニュースが出ています。それで株価が急激に上がってきている状況です。
――新30年ビジョンでは「2040年までにグループの時価総額200兆円を目指す」目標を掲げています。現在の生成AIやインフラの進化スピードを見る限り、もっと前倒しで達成できるのではないですか?
早いと思います。前倒しは十分に可能であり、もっと早いタイミングで達成できると考えています。
私は今日、16年後に「純資産価値1000兆円」という数字を発表しました。当然その前に時価総額200兆円は超えるんじゃないかと思います。今(グループの)「お腹の中」に(仕込み中の事業が)準備中です。結構、自信を持っています。だから今日(1000兆円と)言ったんです。
――(ソフトバンクグループ傘下の半導体設計大手)英Arm以外の主要事業(ソフトバンク・ビジョン・ファンドや国内通信など)における、今後の具体的なAI成長見通しを教えてください。
AIの進化を支える「AIモデル」(OpenAIなど)「AIインフラ」(データセンター)「フィジカルAI」(ロボティクス)の3領域が、これからの成長の推進力になります。これらが中核であるArmの半導体と有機的に連動することで、グループ全体の収益を力強くけん引していく見通しです。
――ドナルド・トランプ米大統領との会談や笑顔のツーショットが話題を呼びました。今後、米政権のトップとどのような形で関係を維持していきますか?
もう何度もお会いしていますが、すごい方だと思います。彼はメディアではさまざまな批判をされますが、討論を勝ち抜いて米国の大統領になった方ですから、すさまじい力を持っています。何より「アメリカという国家を再び強くし、人々に繁栄をもたらす」という意志が強烈なリーダーです。
たまにゴルフを一緒にすることもあります。中東の戦争も落ち着いているようですから、ぜひこのまま平和をもたらしてほしいと思います。
――データセンター事業のROI(投資利益率)や、米テキサス州ミラベルなどでの収益見通しは?
米オハイオ州で進める世界最大級の原発10基分(10ギガワット規模)の巨大データセンタープロジェクトは、投下資本も大きいですが、相当な収益も見込まれます。いまお客さまとの間でも「覚書」を交わそうとしています。これが正式契約になれば大変大きな利益が出ます。利益が確定できるのです。そういう覚書が今、進行中です。
オハイオだけでも、ものすごい利益が出ます。「金の卵」がじゃらじゃらと出てきますけれども、オハイオだけでなくテキサスやフランスでも展開しています。いずれは日本でも、もっと拡張していくべきだと思います。
――OpenAIらと進める「Stargate Project」(スターゲート計画。超巨大AIデータセンター構想)規模拡大の勝算はありますか?
規模の拡大はあります。スターゲート計画はOpenAIとわれわれ、米Oracleのような会社が、OpenAIの計算基盤を増やしていくための設備投資計画です。
現在、予定以上に前倒しで、より大きく建設中です。ソフトバンクグループとしてはOpenAIのためのデータセンターも作りますが、それ以外のAIデータセンターを必要としているハイパースケーラーが何社もありますから、それらの会社に合わせてデータセンターを提供していきます。そしてわれわれの事業として拡大していきます。
――AIインフラにおける最大のボトルネックである「電力確保」を巡り、東京電力をグループ会社にする、もしくは強固なパートナーになるという戦略はどれほど重要だとお考えですか?
東京電力さんの次のオーナーとして、われわれの子会社の通信会社、ソフトバンクが名乗りを上げています。何社かの中で、重要な候補として残っています。もしこれが実現できれば……われわれは日本でデータセンターを作るべきだと思っているんです。(データセンターが)ないと日本は、もう完全に遅れてしまいます。でも電力がないんです。
しかし現在の規制は、がんじがらめすぎるのです。許認可を申請するだけで6年間かかります。申請にですよ? 6年も経ったら(世界の)AIはどこまで進むのか。もし東京電力さんがわれわれのグループの中に入れば、電力を増やして、AIデータセンターを日本に持ってくると。こういうことであります。
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