CxO Insights

過去最高「売上高370億円」の大戸屋 創業家の新社長が挑む「次の一手」(2/3 ページ)

» 2026年06月29日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

ビジネスパーソン頼みからの脱却 ファミリー層獲得の立地戦略

 大戸屋の客層を見ると、男性のビジネスパーソンが多いイメージがある。確かにランチ時になると、都心部の店舗はビジネスパーソンであふれている。しかし、売り上げをさらに伸ばしていくためには、ファミリー層や女性客の獲得が必要になるはずだ。

 担当者は「商業施設に入っている店舗では、ファミリー層や女性も多く来店しています。店舗ロケーションの工夫という面で、この6年間で幅ができてきたのではないでしょうか」と説明する。その点は三森新社長も認めているものの、筆者から見ると、全体的にはまだファミリーの比率は低いように思われる。

 筆者も時々利用しているが、大戸屋は他のファミリーレストランと比べても、店内スペースが狭いイメージがあり、開放感に乏しい。子ども連れの客は、それほど多くない印象だ。新しい客層を獲得するためには、店舗の立地によるものの、メニュー面もファミリーや女性層の嗜好(しこう)に合ったものを開発する必要があるように思う。

 大戸屋の店舗数を見ると、国内は直営店が156、フランチャイズ(FC)店が164、海外は直営店が9、同FC店が132で合計461店ある。直営とFC、どちらを増やすかについて、蔵人前社長は「基本的にはFCを伸ばしたい。ですが粗利益を考えると、直営の方がいい部分もあります。時代に合う形で店舗を展開していきたい」と話す。

 また全国的には関東、東北に店舗が多い。一方、関西を含めた西日本地域には少ないため、今後は西日本の店舗を増やしていきたいとしている。海外についてはタイへの出店が最も多く、インドネシアやフィリピンへの出店も増やす意向だ。

 3年前、米ニューヨーク店を訪れた筆者の目を引いたのは、日本の定食屋とは一線を画す高級和食レストランとしての佇まいだった。この海外市場のブランディングについて蔵人氏は「いまの大戸屋ニューヨーク店の価格は高いか安いかというと、ミドルに位置しています。カジュアルにジャパニーズフードが食べられるような新しい業態を開発してもよいのではないかという意見が、社内にはあります」と指摘。新しい業態の展開も考えているようだ。

photo

鍋物集中による厨房の停滞 調理スピードと差別化の課題

 店内調理でひと手間かけたメニューを売りにしてきた大戸屋は、課題も抱えていた。冬場に鍋物などの注文が集中すると、調理場のコンロが足りなくなり、注文してから料理が届くまでの時間がかかりすぎるのだ。

 これに関して担当者は「メニュー作りのことなので、営業部と商品部で話し合って、注文を分散させるなどして提供時間を早めようと、今動いている」と説明する。

 コンビニが健康志向の弁当を売り出して人気を集めるなど、外食業界の市場環境は競争が激化する一方だ。この環境下で成長するためには、メニューを含めたサービスの差別化が求められる。4月に発表した「からだにうまい。」という抽象的なスローガンだけでは、顧客にはアピールできない。健康志向、無農薬野菜など食材にこだわる路線は継続する必要はあると思うが、サービス面で他社との違いがないと新規顧客の獲得は難しいだろう。今年度の目標売上高は、前年より10億円増の380億円と堅めに設定している。

photo 4月に発表したスローガン「からだにうまい。」(プレスリリースより)

 外食産業では、配膳ロボットを導入する企業が増えている。三森新社長は「店のロケーションによって変わると思いますが、基本的には時代の流れの中で、いつか使ってみることはあるかもしれません。ただ現時点では、大戸屋に期待されているものがあるので、導入する考えはない」と述べた。

 テクノロジーに関しては「大戸屋ではできないコロワイドグループのシステムを使うことで業績を伸ばせた」と指摘。食材の調達についても、大戸屋とコロワイドグループの他の店舗とクオリティーが合えば、共同で実施する意向を示した。

 大戸屋は現在、ネパール人の社員を大幅に増やしており、店内サービスでも多くのネパール人を採用しているという。注文する際にタッチパネルを導入しているものの、料理を運ぶのはあくまでもスタッフだ。最低賃金が上昇する中で、人件費を抑えながらサービスの質を落とさないことは、店舗運営上の課題になっている。

photo 三森新社長は「現時点では、大戸屋に期待されているものがあるので(配膳ロボットを)導入する考えはない」と述べた(プレスリリースより)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR