これほど深刻な被害が出ているにもかかわらず、詐欺広告が消えない背景には主に3つの理由がある。
InstagramやYouTube、LINEなどを運営するプラットフォーム企業の広告売上の約10%(約160億ドル、7月6日時点のレートで)を詐欺や禁止商品の商材が占めている実態がある。
SNSのビジネスモデルは広告に大きく依存しているため、取り締まりを強化すれば、広告収入が大きく減る可能性がある。FacebookやInstagramを提供するMeta社は「技術的に困難」という理由をつけて対策を拒否するなど、収益源を断つような自主的な排除には消極的になっている。
詐欺集団は大規模に組織化されている。例えば、タイとミャンマーの国境付近にある「KKパーク」と呼ばれる詐欺拠点では、闇バイトなどで集められた若者が拉致・監禁され、パスポートを取り上げられた上で強制労働として詐欺行為に加担させられていた。この被害者の中には日本人も含まれており、拠点を移しながら現在もなくならない実態がある。
詐欺広告の取り締まりは消費者庁や総務省など複数の省庁にまたがっており、現状の法体系ではどこも決定的な規制権限を持っていない。さらに、対象となるプラットフォーマーの多くが米国などの海外企業であるため外交問題も絡み、日本単独では有効な手を打ちづらい状態となっている。
こうした中、台湾ではわずか1年で詐欺被害額を30分の1に減らすことに成功している。
当初、台湾も法規制やプラットフォーマーへの自主規制要請といったアプローチを取ったが、実効性がなく失敗に終わった。そこで「プラットフォーマーを規制する」のではなく、「ユーザーのリテラシーを向上させる」という逆のアプローチへと転換したのである。
具体的には、市民参加型の通報システムを導入した。ユーザーが怪しい広告を見つけたら、詐欺広告を通報する「公式Webサイト」から通報。集まったデータを蓄積・分析し、詐欺広告の迅速な特定と削除につなげた。
さらに、市民同士での議論の場を設け、「厳しい規制が必要だ」という合意形成を行った。その市民の声から政府が法律を作り、プラットフォーム企業に圧力をかけて協力させるという「ボトムアップの動き」を展開したのだ。
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